消化器外科手術後の鎮痛・鎮静管理|術式別にとらえた術後患者の鎮痛・鎮静管理

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、消化器外科手術後の鎮痛・鎮静管理について解説します。

 

消化器外科手術後の鎮痛・鎮静管理(食道がん)

1)食道がん手術後の病態

食道がん手術は,縦隔内を含む頸部・胸部・腹部操作を伴うため(図1),侵襲が大きいとされています.

 

図1食道術後の様子(傷・再建・ドレーン

食道術後の様子(傷・再建・ドレーン)

 

手術侵襲の影響で,全身性炎症反応が呼吸・循環に影響を与えるため,術後に人工呼吸管理が行われます.

 

食道がん手術の3大合併症は,呼吸不全・循環不全・縫合不全です.

 

手術侵襲に伴う生体反応により,手術直後はサードスペース(third space)に非機能的な細胞外液が貯留するため,循環血液量が減少した状況に陥りやすくなります.

 

その後,侵襲からの回復によりサードスペースに貯留した非機能的細胞外液は血管内へと移行するリフィリング(refilling)という現象を迎え,利尿期となります.

 

この時期は気道分泌物が増加するため,術後肺合併症予防ではこの時期が重要です.この時期を迎える前に,立位・歩行ができるように早期離床を援助します.

 

3領域(頸部・胸部・腹部)にわたる手術創に加え,胸腔ドレーン留置に伴う疼痛も出現するため,硬膜外鎮痛法を中心に鎮痛管理を実施します.

 

2)鎮痛・鎮静管理の方法

①鎮痛管理の方法

患者さんの状況に合わせ,主観的スケールと客観的スケールを組み合わせて疼痛を評価します.

 

NRS:0 ~ 2 点,PHPS:0 ~ 1 点を目標に,CPOTやBPSによる客観的評価を組み合わせて行います.

 

術後の鎮痛はフェンタニルなどのオピオイドが基本ですが,傾眠や呼吸抑制,悪心・嘔吐に注意が必要です.

 

自己調節鎮痛(PCA)は,迅速な薬剤効果と患者さんの満足感が得られます.中でも,硬膜外PCA(PCEA)はその効果に優れています.

 

one point

●術後呼吸ケアの観点から考えると,どの時期に痛みが強くなり,またどの時期に咳嗽力が低下するのかを知ると,患者さんのアセスメントが深まります.

 

●当院で行った咳嗽時最大呼気流速(PCF:peak cough flow)の調査では,咳嗽力が術後2日目に術前比48%にまで低下し,術後6日目で有意に改善しています.(図2

 

図2食道がん周術期の咳嗽力の変化

食道がん周術期の咳嗽力の変化

 

● NRSの調査では,術後2日目から術後5日目にかけて上昇傾向でした.

 

● 咳嗽力を低下させる要因はさまざまですが, リフィリングによる肺のうっ血や疼痛の関与などが考えられます.

 

②鎮静管理の方法

共通する評価スケールを用いて鎮静薬をコントロールします.

 

目標は,RASS:0 ~- 3 でのコントロールです.

 

過剰鎮静・過少鎮静に注意が必要です.

 

3)アセスメントの視点

NRSは,患者さんが正しく痛みを表現できているかわかりません.NRSのみで判断せず,PHPSのような具体的な行動における痛みの評価も必要です.

 

咳嗽力が低下し,呼吸ケアの必要な時期には,積極的な疼痛管理が必要です.

 

4)咳嗽時の疼痛を軽減するコツ

咳嗽時には疼痛が伴いますので,創部保護を行います.

 

図3は腹部正中創に対する創部保護の方法です.

 

図3腹部手術後の咳嗽時創部保護

腹部手術後の咳嗽時創部保護

 

正中創の両脇に手を当て,咳嗽のタイミングで臍の方へ押し込みます.

 


[Profile]
増居 洋介 (ますい ようすけ)
北九州市立医療センター 集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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