敗血症の鎮痛・鎮静管理

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、敗血症の鎮痛・鎮静管理について解説します。

 

〈目次〉

敗血症の病態生理

敗血症(sepsis)は,感染症による侵襲に対する全身性炎症反応症候群(SIRS:systemic inflammatory response syndrome)であり,病原体が血液内に存在する菌血症を含みます.

 

全身性炎症反応症候群(SIRS)とは,体温,心拍数呼吸数,末梢血白血球数または白血球分画のうち,2 項目以上に異常があり,その炎症反応がなんらかの生体侵襲が原因となって生じていると考えられている状態です(表1).

 

表1SIRSの定義

 

以下の4項目中2項目以上を満たす場合をSIRSとする.
① 体温> 38℃ または < 36℃
② 心拍数> 90/分
③ 呼吸数> 20/分 または PaCO2 < 32 Torr
④ 末梢血白血球数> 12,000/μL または < 4,000/μL ,
  あるいは 未熟型顆粒球> 10%

 

敗血症はすべての臓器に影響を与え,さまざまな組み合わせの臓器障害を呈し,臨床像は多彩です.

 

敗血症が重症化すると臓器機能障害に加え,循環障害(乳酸アシドーシス,乏尿,意識障害),低血圧を合併し,重症敗血症と言います.

 

さらに重症敗血症の中でも,収縮期血圧90mmHg 未満,または平時の収縮期血圧から40mmHg を超える低下をきたし,適切な輸液を行っても改善されない場合や,昇圧薬を使用して血圧を維持しても臓器障害や循環不全が持続する状態を,敗血症性ショックと言います.

 

治療については,敗血症の国際ガイドライン であるSSCG(Surviving Sepsis Campaign Guidelines) など各種敗血症ガイドラインを参照していただければと思いますが,2011年に世界クリティカルケア看護師連盟(WFCCN)が,敗血症患者さんの看護に関する63 項目の看護ケア推奨項目からなる看護師版SSCG を発表しています.

 

内容は,予防の推奨事項として,教育,院内感染,手指衛生,手術部位および尿路感染症のサーベイランスに関連した感染管理に関する推奨事項などとなっています.

 

敗血症の鎮痛・鎮静管理

敗血症患者さんにおける鎮痛・鎮静管理では,まず循環動態への影響を考える必要があります.とくに重症敗血症のようなショック状態であるときです.

 

一般的に鎮痛薬,鎮静薬は心筋収縮力,心拍出量と組織の酸素消費量を抑制することが期待されています.そのため,ショック状態にある場合に,過度の鎮痛・鎮静により低血圧を助長・悪化させないようにすることが必要です.

 

また,呼吸不全,循環障害,腎障害などの病態が合併している場合は,人工呼吸管理や持続血液透析濾過法(CHDF)が行われるため,循環動態に最大限影響がない範囲での鎮痛・鎮静管理を考えておくことが必要になります.

 

循環不全から意識の混濁がある場合は,ラインなどの自己抜去のリスクもあるため,医師と鎮静レベルを厳密に決めておくことや,意識の改善評価と鎮静薬の早期中断を行うために,1日1回の鎮静薬の中断などを行うことも必要になります.

 

one point敗血症患者さんのせん妄

敗血症におけるせん妄に関して,次のことが考えられています.

 

敗血症そのものでも,敗血症性症としてせん妄を発症するリスクがあると考えられています.

 

敗血症に伴う中枢神経障害,敗血症性脳症の脳循環について検討した研究*を紹介します:敗血症患者20 例の脳波(EEG)と聴覚誘発電位(ABR)V波潜時を調べた結果,敗血症性脳症では,EEGの悪化に伴ってABRのV波潜時も延長することが明らかになった.脳血流量,脳酸素消費量,経頭蓋超音波ドップラーによる中大脳動脈平均血流速度からは,脳血流および代謝の低下が示唆されている.

 

* 定光大海ほか:敗血症性脳症の脳循環・代謝動態変動に関する研究(科研研究費助成事業,研究課題番号:03670728 研究者番号:10187164)

 


[Profile]
嶋田 一光 (しまだ いっこう)
日本医科大学付属病院救命救急センター

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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