急性心不全の鎮痛・鎮静管理

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、急性心不全の鎮痛・鎮静管理について解説します。

 

〈目次〉

急性心不全の病態生理

急性心不全心臓に器質的および/あるいは機能的に異常が生じて急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻し,心室拡張末期圧の上昇や主要臓器への灌流不全をきたし,それに基づく症状や徴候が急性に出現,あるいは悪化した状態です.

 

急性心不全の原因はさまざまであり,新規発症や慢性心不全の急性増悪があり,症状や徴候はきわめて多彩です.初期治療は酸素療法が基本となります.

 

2011年の急性心不全治療ガイドラインでは,心係数肺動脈楔入圧を用いるForrester 分類や,うっ血所見と低灌流所見を用いるNohria-Stevenson分類に加えて,収縮期血圧(SBP:systolic blood pressure)を用いて分類するクリニカルシナリオが取り上げられています(表1).

 

表1クリニカルシナリオの分類と治療

クリニカルシナリオの分類と治療

 

[急性心不全治療ガイドライン(2011 年改訂版)より引用]

 

肺水腫を合併した場合の治療は,循環動態だけでなく低酸素血症の対応として,非侵襲的陽圧換気(NPPV)や大動脈内バルーンパンピング(IABP)を用いた治療が必要になります.

 

急性心不全の鎮痛・鎮静管理の目標

①鎮痛管理

急性心不全の鎮痛の目標に関しては胸痛の症状が挙げられ,硝酸薬に加えて,経皮的冠動脈形成術(PCI)による再灌流による効果が得られると軽減します.

 

しかし,持続した痛みは交感神経を刺激することで心拍数血圧の増加をきたします.その結果,頻脈高血圧により心筋酸素消費量の需要と供給のバランスに悪影響を与えます.そのため,鎮痛薬を使用します.

 

NRSやBPS,CPOTなどの鎮痛スケールを用いて安静時に定期的に評価するのはもちろんのこと,体位調整など苦痛を与える可能性がある時や,痛みを感じていると思われる表情・しぐさが観察された場合は,必ず評価することが大切です.

 

②せん妄予防

非侵襲的陽圧換気(NPPV)を使用する場合の鎮痛・鎮静管理については別の項目で説明していますが(NPPV管理中の患者の鎮痛・鎮静管理参照),心不全の場合のNPPVの使用目的は,陽圧呼吸療法による前負荷の軽減などになります.

 

その際,NPPVマスクの装着や陽圧換気下に置かれる不快感が発生し,せん妄のリスク要因となります.

 

また,もともと胸痛による恐怖感や不安感がある患者さんにとって,さらなる不快感がストレスとなり,せん妄の発生を高める要素の1つとなると考えられます.

 

せん妄予防に関しては,PADガイドラインおいては環境を最適化すること,いわゆる環境調整について示されています.照明や騒音の調整,刺激を分散せず集約する,夜間の刺激を少なくするなどです.そして,定期的にせん妄評価スケールを使用し,患者さんのせん妄の有無を把握します.

 

③鎮静管理

鎮静を行うかは循環動態や患者さんの状態によって検討されますが,鎮静薬の有無に限らずRASSでの評価も併せて行います.

 


[Profile]
嶋田 一光 (しまだ いっこう)
日本医科大学付属病院救命救急センター

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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