自分にはできないと思ったらフロントラインに行かない,ということが許されますか?|せん妄ケア
『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、チームでのせん妄ケアについて解説します。
自分にはできない,手に余ると思ったらフロントラインに行かない,ということが許されますか?
ケア提供者が不安な気持ちで接していると,患者さんにもよい影響はありません.
せん妄ケアはチームで行うものです.1 人で背負わずに,自分にできないと思ったときは別のチームメンバーに代わってもらいましょう.
〈目次〉
せん妄ケアはチームで
チームは,多様なメンバーが個々の得意分野で力を発揮しながら互いに補い合い,助け合って共通した目標の達成に向かうという点で,メンバー個々の目標達成のために協力する集団(グループ)とは異なります.
経営学では,多くのスキルや判断,経験を必要とする仕事には,個人よりチームであたる方が効果的とされています1).
個人がもつスキルや経験だけでは目標達成が困難であるという点で,せん妄ケアはまさに,個人ではなくチームで行う仕事といえるでしょう.
チームをつくり,有効に機能させる
受け持ち看護師やその日の担当看護師だけがケアの責任を負うのではありません.複数の看護師メンバーで話し合いをもつことができ,必要に応じて担当者を交代できる看護チームをつくることが必要です.
また,多職種によるせん妄ケアチームの体制をつくることができれば,より強力なバックアップとなります(多職種チームにおけるせん妄ケアにはどんな効果がありますか?参照).
チームを有効に機能させるには,チーム内で自由に意見を出し合える雰囲気をつくることが大切です.そのためには,まず相手の発言を否定せずに受け止めて聴くことです.
異なる価値観をもつ他者や他職種の存在があってこそのチームなのですから,自分とは異なる視点からの意見や思いを大切にしてよく聴き,相手の立場に立って理解しようとする姿勢が必要です.
同時に,自分の思いや考えを恐れずに話すことも必要です.メンバーの一員としてチームに貢献するためには,視点や価値観の異なる考えをチームに提供することが重要です.
日ごろから自分の強みと弱みを開示でき,助け合えるチームをつくる努力を
さらに,ほかのメンバーが目標達成に向けてよりよく活動できるよう自分がサポートできることは何か,自分がよりよく活動するには誰にどのようなサポートをしてもらいたいか考え,チームメンバーに伝えます.
他職種の活動をお互いにサポートし合うことによって,個々の活動の効果が増し,チームに相乗効果が生まれてくるのです.
やってはいけない
せん妄ケアに伴い生じるさまざまな困難を,受け持ち看護師や主治医だけの責任にして責めてはいけません.
誰かを責めることでチーム全体のケア意欲がそがれ,結果としてせん妄患者さんへのケアが十分に提供できなくなることにつながります.
[Profile]
菅原 聡美 (すがわら さとみ)
千葉大学医学部附属病院看護部
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行