ユーモアの大切さとは?|せん妄ケアにおけるストレスマネジメント
『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄ケアにおけるユーモアの大切さについて解説します。
自分の置かれた状況を突き放してみられるユーモアの大切さってどういうことですか?
せん妄ケアは1人ではできません.チームスタッフそれぞれの力を結集してこそ大変な状況も乗り越えることができます.
そして,ときにはユーモアを交えてせん妄ケアの経験を語り合うことでチームで実践知を共有し,各人が抱えているストレスを緩和させることが大切です.
〈目次〉
ユーモアの効果・大切さ
コーピング(ストレス要因や負の感情に働きかけてストレスを除去・緩和する方法)の方法として,ユーモアをよく使っている人ほどストレスの影響を受けにくいことや気分の動揺が少ないこと,認知的過程にはユーモアが作用することが指摘されています1).
まずは,自分も患者さんもストレスを抱えない対処方法を実践し,自分がときにせん妄の患者さんにネガティブな感情を抱くことは決して否定せず,大変な状況を一時は覚悟を決めて受け入れることが大切です.
できればその状況下でもユーモアのエッセンスを取り入れ,通り過ぎたら笑い飛ばす組織風土が築かれていくと,もっと現場の看護師は楽になるでしょう.
ユーモアを活用した事例
看護師がもっとも困難感を感じるのは,せん妄によって暴力的な言葉や行動がみられ,易怒性が高まっている患者さんへの対応ではないでしょうか.
以前,こんな方法で困難な状況を乗り超えたリーダーがいました.
『リーダーは,せん妄で易怒性が高まっている患者さんに対し,その勤務帯のメンバーを「せん妄落ち着かせたい(隊)」と命名し,自分を病棟の安全を守る隊長と位置づけ,隊員であるメンバーにミッションを発動しました.
初めのプランは経験豊富なメンバーが落ち着いた口調でゆっくり患者さんに語りかけるというもの,それが効を奏さなければ次のプランへと移行します.最終プランX はいよいよ医師出動レベルで鎮静を検討しなければならない状況と決めていたため,メンバーも先が見えない不安はありませんでした.
新人もその患者さんの病室の前を通るたびにそっと様子をうかがって,危険な状態になっていないか確かめて隊長に報告するという任務を担っていました.
それぞれが,的確に役割を遂行し,戦隊さながらのアイコンタクトやゼスチャーも交えて,コミュニケーションを取っていました.
結果,看護師たちが過度に身構えずに患者さんに接したこともあってか,患者さんもそれ以上興奮されることなく,その日のミッションは無事終了となりました』
この事例では,リーダーは置かれた状況を客観的に受け止め,ユーモアを取り入れた命名や計画を考案し,メンバーの力を合わせた対処を見事に実践したといえるでしょう.
易怒的な患者さんは,医療者の態度や対応にも敏感になっています.
事例のリーダーのように,メンバーの緊張を解きほぐす配慮も有効だったと考えられます.
[文献]
[Profile]
窪田 容子 (くぼた ようこ)
千葉大学医学部附属病院看護部
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行