せん妄ケアにおける医師の治療方針と看護方針の調整は、どうすればよいですか?

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄ケアにおける治療方針と看護方針の調整について解説します。

 

せん妄ケアでは医師の治療方針と看護方針の調整がむずかしいことが多いのですが,それはなぜですか?
またどうしたらよいですか?

 

意見の対立はコミュニケーションエラーと価値観・信念の対立で生じます.
コミュニケーションエラーは成熟した対応を身につけることで回避できます.
価値観・信念の対立は互いに合意を作っていく対話が不可欠です.

 

〈目次〉

治療方針と看護方針が対立する原因

1人の患者さんの治療方針と看護方針が対立する原因には2種類あります.

 

単純なコミュニケーションエラーがあるときと,それぞれの方針を決定づけている職種の価値観と信念が対立しているときです.

 

まずはどちらが原因なのか,あるいはその両方が絡んでいるのか,見極めることが必要です.

 

コミュニケーションエラーを防ぐ

コミュニケーションエラーによって対立が生じるのは,相手への理解不足,双方の尊敬のない言動,思い込みなどが原因です.

 

また相手への誤った認識,感情的な認識は,疲労や緊張,焦りからも生じます.自身の体調をいい状態に維持し,知識とスキルを磨き自信をもちましょう.

 

そのうえで,同僚への連絡,相談,報告はシンプルにわかりやすく率直に結論から述べましょう.

 

感情的にならず成熟したコミュニケーションスキルとマナーを身につけることで,本質的でない対立を防ぐことができます.

 

価値観と信念の対立は,共有できる価値を見出す

価値観や信念は,その人の言動や判断,方針の表明として表現されます.

 

たとえば,ある医師は「出血のリスクを回避したいから術後の安静は厳しく遵守してもらいたい」といい,ある看護師はそのオーダーに対して「安静を強いると身体拘束の連鎖が起きるから,結局患者さんの安静は保てない」と対立を感じることがあります.

 

この医師の方針の根底には「創部の安静がもっとも大切だ」という価値観があり,看護師の方針の根底には「患者さんの安楽がもっとも大切だ」という価値観があります.互いに対話の前提がずれていることに気づかず,方針の検討を行おうとすることで,看護師は医師に対立を感じ,医師は看護師から賛同を得られないことで次第にいらだっていきます.

 

このように,患者さんへの治療・ケア計画が対立した時,互いに相手の価値や信念を修正しようとするとますます対立が激化します.

 

相手の価値や信念は尊重しつつも,そのうえで共有できる価値を探す努力が,患者さん志向の治療・ケアを目指す(目的・目標の共有)ということになるでしょう.

 

そのためには,互いの自己開示と尊敬が基盤となります.

 


[文献]

  • 1)米崎真一:プロジェクトにおける対立のマネジメント:チーム内の対立マネジメントのコミュニケーションマネジメントへの応用.プロジェクトマネジメント学会誌7(1):26-31,2005

 


[Profile]
酒井 郁子 (さかい いくこ)
千葉大学大学院看護学研究科

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

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