患者安全に向けた病院全体の取り組みとせん妄ケアはどのように関連していますか?

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄と患者安全の関連について解説します。

 

患者安全に向けた病院全体の取り組みとせん妄ケアはどのように関連していますか?

 

せん妄の発症は,転倒・転落,チューブやライン類の計画外抜去といったインシデント,自傷・他害といった警鐘的事例につながることがあります.
これらを防止し,患者安全を保証するためにも,病院全体でせん妄ケアに取り組むことが求められます.

 

〈目次〉

せん妄の発症は患者安全を脅かす

とくに過活動型せん妄患者さんでは,興奮や錯乱などにより,転倒・転落,チューブやライン類の計画外抜去の危険性があります.

 

また徘徊による行方不明,徘徊中の転倒・転落による傷害・障害,なかには屋上などから転落し死亡する場合もあります.

 

さらに,自傷行為だけでなく,ほかの患者さん・家族・職員に暴力を奮うような他害行為を引き起こすこともあります.

 

せん妄が関連するインシデントや警鐘的事例の発生状況を把握し分析する

患者安全を保証するための方策として,せん妄が関連しているインシデント(重大事故にいたるおそれのあった事態)や警鐘的事例(警鐘的な意義が大きい事例)の院内の発生状況を把握し,発生要因の分析に基づいて,対策を講じます(表1).

 

表1せん妄が原因となったインシデント事例

 

■入院中の高齢患者さんが,血液透析を実施して病棟に戻った後の深夜帯に,内頸静脈に留置していたブラッドアクセス用のチューブを自己抜去し,出血多量により死亡

 

【事故の要因】

 

  1. 認知症スクリーニング検査を行っておらず,認知症とせん妄を鑑別できていなかった.
  2. ② 生命の危険に直結するようなチューブなどを装着した高齢患者さんのケアになれたスタッフが少なく,患者さんの安全確保の必要性から身体拘束を実施することに迷いがあった.
  3. ③ 認知症による周辺症状としての異常行動や高齢患者さんのせん妄への対応について,看護職以外に協力を依頼することの発想に乏しかった.

 

 

 

[日本医療機能評価機構:【事例】『高齢患者が透析用のブラッドアクセスチューブを自己抜去して死亡した事例』.患者安全推進ジャーナル26:4-6,2011 より引用]

 

せん妄ケアが不十分でせん妄の予防や早期発見・対処につながっていないのであれば,改善に取り組む必要があります.

 

やってはいけない

インシデントや警鐘的事例が発生したときに,当事者を決して責めてはいけません.

 

また,当事者のチーム全体の責任として片付けてもいけません.重要なことはどのように防げるかを検討し,その対策を実践することです.

 


[Profile]
小林 美亜 (こばやし みあ)
千葉大学大学院看護学研究科

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

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