身体拘束について家族に誰がどう説明したらよいのですか?

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、身体拘束する際の患者および家族への説明について解説します。

 

身体拘束について家族に誰がどう説明したらよいのですか?

 

身体拘束以外に患者さんを守る方法がない状況であること,どのような状況になれば身体拘束が解除できるか,身体拘束中に行うケアについて,その患者さんの医療とケアに責任をもつ者が本人と家族に説明します.

 

〈目次〉

必ず本人・家族に説明する

事前の了解があったとしても,実際に身体拘束をせざるを得ない状況と判断したときに,改めて,なぜ身体拘束という手段を取るのかを本人と家族に説明します.

 

緊急を要する場面で家族がそばにいない場合は,患者さんの安全を優先し身体拘束を実施しますが,後で必ず家族に説明します.

 

説明方法のポイント

「身体拘束をしないととても危険だ,命にかかわる」と家族を脅かして説得するのではありません.

 

どのような危険を回避するために身体拘束をしようとしているのか,身体拘束をしないことでどのような危険が生じると考えているかを具体的に話します.一方的に説明するだけではなく,家族から疑問点や要望を出せるように促します.

 

また,身体拘束によって生じる可能性のある皮膚損傷や筋力低下,深部静脈血栓症などの危険性についても説明し,それを回避するケアの実施状況を家族に確認してもらいます.

 

説明時の心構え

医療者は,自分達が必要と判断した身体拘束について,家族が「承諾しない」という選択をする可能性を考えていないことがあります.しかし,本人の意向を無視した身体拘束は人権に反する行為です.

 

「リスクがあったとしても身体拘束は拒否する」という選択が本人や家族によってなされることを想定しておく必要があります.どのような選択がなされても,その条件の中で本人・家族とともにリスクを引き受け,最善のケアを行います.

 

やってはいけない

入院時や手術前など,“ おそらく身体拘束をせざるを得ない状況になる” と予測し,家族に承諾書を書いてもらっていることがあります.

 

たとえ承諾を得ていたとしても,安易に身体拘束を行うことがあってはなりません.予測どおりにならないよう医療やケアを行ってください.

 

メモ医療とケアに責任をもつ者が説明する理由

通常,入院患者さんの医療とケアの責任は主治医と看護師長がもちます.

 

患者さんにとってのデメリットが大きい身体拘束という方法を実施するからには,医療チームを代表して責任を負うことを示します.家族や本人が拒否できないよう権威のある人から伝えるということではありません.

 


[Profile]
湯浅美千代 (ゆあさ みちよ)
順天堂大学医療看護学部

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

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