早期離床のためにはどのような鎮痛・鎮静管理がよい?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、早期離床のための鎮痛・鎮静管理について解説します。

 

これだけはおさえておこう

  • 早期離床のためには,鎮痛を主体とした鎮静管理により鎮静薬を減らすことが重要です.
  • 過鎮静を防ぎ,適切な鎮静管理をするために,毎日,意識レベルや鎮静の必要性を評価します.
  • 1日1回,患者さんの鎮静を切る方法や,鎮痛を十分に行ったうえで無鎮静で管理する方法もあります.

 

〈目次〉

早期離床の視点で鎮痛・鎮静管理を考える

早期離床を進めていくうえで,必ず障害になるのは,鎮静薬の使用です.

 

鎮静薬は,侵襲的な処置や重篤な傷病を患い多くの苦痛がある患者さんの安静を維持するために使用されます.

 

鎮静中は,他動運動や体位調整など受動的な介入をして,関節拘縮褥瘡,肺合併症などの予防に努めますが,筋力低下を最小限にするためには,自動運動など患者さんが能動的に動くことが必要です.

 

ですから,早期離床の観点からは,できるだけ患者さんが意識をしっかりともち,自分で身体を動かすことができるくらいの意識レベルとなるように,鎮静薬は最小限あるいはまったく使用しない状態であることが望ましいです.

 

また,重症患者さんの多くは,気管チューブや処置などによる疼痛があったという記憶をICU 退室後に述べています12, 13).疼痛を始めとした苦痛が生じていることは,日頃重症患者さんと接している皆さんは,よくおわかりかと思います.

 

つまり,鎮痛を主体とした鎮静管理を行うことで,患者さんの苦痛を緩和するとともに,鎮静薬を少なくできます.

 

鎮静の必要性を毎日評価する

鎮静薬による過鎮静が患者さんを不動化しています.不動化によって,現在進行しているかもしれない患者さんの筋力低下が評価できません.

 

さらに,過鎮静である場合は,鎮静薬の使用量の調整が難しくなります.

 

一般的には鎮静スケールのRASSを用いて,RASS-3~-5を過鎮静としていますが,たとえば,RASS-5は『呼びかけにも身体刺激にも無反応』と表される状態です.そうなると,今投与されている鎮静薬の量よりも多くてもRASS-5です.鎮静を深くしようとすると薬剤の量が増えてしまいます.

 

過鎮静による深昏睡状態は,自動運動による酸素消費量が治療上障害になる場合は必要かもしれません.それほど重症なのであれば,他動的にモビリゼーションを実施していく必要があると思います.

 

しかし,不必要な過鎮静は患者さんを重症に見せてしまい,経験の浅い看護師にとっては「体を動かしてよいのかな?」と離床に向けての第一歩を踏み出しにくくなります.

 

早期離床を進めるためには,RASSなどを用いて鎮静レベルを毎日評価し,また,鎮静の必要性も毎日評価することで,なるべく浅い鎮静レベルにコントロールすることが重要です.

 

鎮静の中断や無鎮静による管理

鎮静管理の方法として,1日1回鎮静を中断し,覚醒状態をみながら適切な鎮静にコントロールする方法(daily interruption of sedatives:DIS)14)や,鎮痛を十分に行ったうえで無鎮静での管理をする方法15)もあります.

 

こういった管理が従来の方法に比べて,患者さんの病状経過においてよい成果(人工呼吸管理期間の短縮やICU 滞在期間の短縮など)を上げています.

 

鎮痛を行い,鎮静薬を減量あるいは終了し,患者さんが苦痛を表出でき,それをできるかぎり除去し,患者さんと共に早期離床を進めていく必要があります.

 

one point

患者さんの苦痛の原因を取り除いたうえで無鎮静管理をすることは理想的ですが,実際には,完全に患者さんの苦痛を取り安静を確保することは難しい場合もあり,鎮静薬が必要なこともあります.

 

しかし,いかに鎮静薬を使わずに患者さんの苦痛を把握し,苦痛を取り除くことができるか,それが看護の力の見せ所ではないでしょうか.

 


[引用・参考文献]

 

 


[Profile]
山田  亨 (やまだ とおる)
邦大学医療センター大森病院特定集中治療室
急性・重症患者看護専門看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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