早期離床とは?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、早期離床について解説します。

 

これだけはおさえておこう

  • 早期離床とは,立位や歩行などベッドから離れるという結果だけではなく,その過程も含んでいます.
  • 以前は,重症患者さんにとって安静臥床が傷病の回復に有用だと考えられていましたが,逆に安静臥床による合併症が患者さんのその後のQOLに影響を与えている可能性があり,現在では早期離床が必要とされています.

 

〈目次〉

早期離床とは,何を意味するのか?

早期離床と聞くと,早期に床(ベッド)から離れる,つまり,ベッドから離れて,立位や歩行ができたという結果を示している言葉のように感じます.

 

しかし,それだけではなく,立位や歩行ができるために行われた過程(プロセス)も含め早期離床とされています.

 

これは,安静臥床(bed rest)のICU 患者さんに対して,なるべく早期から身体を動かしてもらう,もしくは,自分で身体を動かせない患者さんの身体を動かすというearly mobilization(早期から動かすこと)やearly rehabilitation(早期のリハビリテーション)に該当するものと考えられます.

 

このようなことから,早期離床として行われるアプローチには,ポジショニング,他動運動,体位調整,頭部挙上(ヘッドアップ),自動運動などベッド上で行うものから,徐々に端坐位,立位,坐位(椅子や車椅子へ移乗),歩行などが含まれていると言えます.

 

さらに,徐々に患者さんの運動負荷を増やしていく過程では,鎮静の影響が関連していきます(表1).

 

表1早期離床の内容

早期離床の内容

 

早期離床はなぜ必要か?

ICUの患者さんは,重篤な疾患や外傷により代謝亢進した状態であり,傷病の治癒のため,また,患者さん自身が運動の負荷に耐えられないため,安静臥床(bed rest)が必要であると考えられてきました.安静のためには,鎮静薬や筋弛緩薬を使用して,傷病が改善してきたらこれらの薬剤を減量していくという方法です.

 

しかし,実はこのような安静臥床での全身状態の管理は,患者さんに多くの合併症を引き起こすリスクになります.

 

具体的には,筋力低下,無気肺人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP),血圧調整障害,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT),褥瘡,イレウスなどがあります.とくに,全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)を患い人工呼吸器を使用する重症患者さんでは,ICU-AW(ICU-acquired weakness)という全身の筋力低下を生じる神経・筋障害1)に注意が必要です.

 

ICU-AW のリスク因子には,安静臥床以外にも,多臓器不全高血糖ステロイド,筋弛緩薬があり2),病状の進行などにより回避不可能であったり,治療上,しかたがない場合もあったりするかもしれません.しかし,安静臥床だけは,看護師が患者さんの体を動かしたり,頭部挙上を促し,支援したりすることで改善が可能な部分になります.

 

人工呼吸器を装着した重症患者さんでは,鎮静薬を使用することで,完全に患者さんが自分で動かない,あるいは,ほぼ不動状態で全身管理が行われることが多くあります.健康な成人であっても,完全な安静臥床状態で,筋力は日ごとに1%低下する3)と言われます.

 

できるだけ早期から筋力低下を予防するために,モビリゼーションをする必要があります.

 

早期から動かすこと(モビリゼーション)は,人工呼吸管理中であっても,安全な環境を準備すれば実行可能である4, 5)と言われています.

 

また,この筋力低下は入院中に解決せずに,その後の患者さんの生活やQOLにも長期的に影響を及ぼすことに注意が必要です.

 

ARDSサバイバーを対象とした研究6)では,社会復帰率は,1年後で48%であり,5年後でも77%でした.さらに,肺機能はほぼ正常であったが,6分間歩行能力は健常者に比べ,1年後時点で66%,5年後でも76%となっており,5年経過しても運動機能の回復がされていない状況です.

 

安静臥床となる時間をできるだけ少なくして,患者さんの身体機能の低下を最小限にする必要があります.

 

人工呼吸器使用患者の筋力低下

重症疾患が安定あるいは改善し,人工呼吸器からウィーニングを開始しようと鎮静薬を切ると,意識はあるのに,力が入らず四肢が動かないという患者さんがいます.

 

このような筋力低下は,critical illness polyneuropathy(CIP),critical illness myopathy(CIM),critical illness neuromyopathy(CINM)などと呼ばれてきました.

 

これらは重症疾患後の廃用性筋萎縮だけでは説明がつかない筋力低下です.

 

これらの診断のためには,筋生検や神経伝導検査などが必要ですが,これらの明確な区別は難しく,先程も説明したとおり,廃用性筋萎縮を含むこれらの筋力低下は,重症患者さんのQOLにも影響を与える非常に大きな問題であるため,これらの筋力低下をICU-AWととらえ見つけていくことの重要性7)が強調されています.

 

ICU-AWの診断基準8)表2に示します.侵襲的な検査なく診断することができます.

 

表2ICU-AWの診断基準

 

  1. 1)重症疾患後に進行する全身の筋力低下
  2. 2)筋力低下は,びまん性(近位側,遠位側の両方の筋肉),左右対称性,弛緩性であり,通常は,神経機能は残存
  3. 3)すべての検査可能な筋群に対して,24時間以上の間隔をおいて2回以上実施したMRCスコアの総合点が< 48点,もしくはMRCスコアの平均点が<4 点
  4. 4)人工呼吸器に依存している状態
  5. 5)既往の重症疾患と関連がない筋力低下の原因を除外

● ICU-AW を診断する最低限の基準は,1,2,3 もしくは4,5

 

Stevens RD et al:A framework for diagnosing and classifying intensive care unit-acquired weakness. Crit Care Med 37(10 Suppl):S299-S308, 2009 より筆者翻訳して引用]

 

ここで使用されているMRC(medical research council)スコア9)は,ベッドサイドで簡便に行える筋力検査です.こちらも表3に示します.

 

表3MRCスコア

 

Kleyweg RP et al:Interobserver agreement in the assessment of muscle strength and functional abilities in Guillain-Barre syndrome. Muscle Nerve 14(11):1103-1109, 1991 より筆者翻訳して引用]

 


[引用・参考文献]

 

 


[Profile]
山田  亨 (やまだ とおる)
邦大学医療センター大森病院特定集中治療室
急性・重症患者看護専門看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

 

 

※訂正とお詫び

 

当記事は、一部誤りがございました。2019/2/18に正しい表記に修正し、記事を更新いたしました。訂正してお詫び申し上げます。

 

(誤)手関節掌屈

 

(正)手関節背屈

 

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