せん妄の評価はどのように行う?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、せん妄の評価について解説します。

 

〈目次〉

なぜ評価が必要か

せん妄は,主観的な評価では見逃してしまうという前提があります.とくに低活動型せん妄の患者さんは一見,じっとしていたり,傾眠で鎮静されているように見えたりするので,観察者からしてみればその時は手をかけずに見ていられる状態なのかもしれません.

 

しかし,実は患者さんは不安や恐怖に苛まれていたりすることがあります.

 

そのような患者さんは,注意や集中力が欠如し,後にドレーンやチューブを自己抜去していた,ということもありえます.

 

せん妄のほとんどは低活動型ですので,スクリーニングなしでは,多くのせん妄が見逃されることになります.

 

見逃されていることが多いせん妄患者さんに対して,まずは客観的なせん妄評価スケールを使って,早めにせん妄を発見することが重要です.

 

せん妄の評価の方法

せん妄の評価方法としては,中枢性神経疾患や筋弛緩薬投与中の患者さんを除き,認知機能障害や人工呼吸管理中の患者さんを含めたすべての患者さんに対して,定期的にせん妄の評価スケールを用いてモニタリングを行います.

 

PADガイドラインでは,定期的にせん妄のモニタリングを行うことが推奨され,CAM-ICU(confusion assessment method for the ICU)およびICDSC(intensive care delirium screening checklist)が妥当かつ信頼性のあるツールとされています9)

 

せん妄の評価のタイミング

せん妄はいつ評価してもよいと思います.定期的に評価すれば,これまで気づくことができなかったせん妄症状に気づく確率が高くなるでしょう.

 

ただし,評価の頻度を多くするほど現場の負担が増えますので,まだ導入していない施設では,まずは無理のない頻度で導入するとよいでしょう.

 

CAM-ICUの場合は12時間ごと,ICDSCの場合は8時間ごとが目安とされています.

 

CAM-ICU(confusion assessment method for the ICU)

CAM-ICU(キャム-アイシーユー)は,「所見1:精神状態変化の急性発症または変動性の経過」,「所見2:注意力欠如」,「所見3:無秩序な思考」,「所見4:意識レベルの変化」をもって行い,4 つの所見のうち「所見1」+「所見2」+「所見3 または所見4」がそろえば,せん妄と判定されます(図1).

 

図1CAM-ICUのせん妄の評価方法

CAM-ICUのせん妄の評価方法

 

  • 患者さんにいくつかの簡単なテストをして判定します.気管挿管などで言語的コミュニケーションが取れない,手先を細かく動かすことができない患者さんでも評価できるようにつくられています.
  • 12時間ごとに定期的にスクリーニングを行います.あとは,ベッドサイドの看護師が必要と感じた時(患者さんの状態が変化した,新たなケアが行われた,患者さんにいつもと違う言動が認められたなど)に適宜評価します.評価したその時点でせん妄かどうかを評価できます.
  • とくに注意力欠如に重点が置かれています.そのため,自己抜去のリスクがあるか確かめるために使われることがあります.
  • CAM-ICUは患者さんの協力を必要とします.たとえば,指示に従って手を握る,質問に答えるなどです.とくに所見3の質問項目は,「石は水に浮くか」,「釘はハンマーで叩くか」など,患者さんにとっては一見失礼にあたったり,テストを行うことで逆に混乱をまねいたりする質問があります.患者さんの協力によっては評価ができない可能性があります.

 

CAM-ICUの評価方法10)

まずRASSで鎮静深度を評価します.RASS-3~+4の場合,せん妄評価に進みます.RASS-4または-5である場合は鎮静レベルが深すぎるため,せん妄の評価ができないからです.

 

所見1

所見1は入院前,または手術前の精神状態を評価します.緊急入院の場合だと変化していることがほとんどなので,所見2から行うことが多いです.

 

所見2

所見2の注意力欠如の評価は,10個の数字(2 3 1 4 5 7 1 9 3 1)を1数字1秒の速さで読み上げ,1のときだけ手を握るように指示します.数字を読み上げるだけなので評価しやすいです.

 

聴力に問題がある患者さんに対しては,図2のような5つの絵を1枚につき3秒ずつ,何の絵か言葉で説明しながら見せます.その後に,10個の絵(5つは新しい絵,5つはすでに見せた絵)を1枚につき3秒ずつ,言葉で説明しながら見せていき,すでに見た絵が出た時は合図してもらいます.

 

数字のテスト,絵のテストとも,3個以上間違えると所見2ありとして次に進みます.2個以下ならせん妄なしとして評価終了です.

 

図2視覚テストのためのイラスト

視覚テストのためのイラスト

 

所見3

所見3は,以下のような口頭質問をして無秩序な思考がないかチェックします.

 

2つ以上間違えると所見3ありとなり,せん妄ありと判定されます.間違いが1つ以下であれば,所見3なしとして,所見4に進みます.

 

  1. 1.石は水に浮くか?(葉っぱは水に浮くか?)
  2. 2.魚は海にいるか?(象は海にいるか?)
  3. 3.1グラムは2グラムより重いか?(2グラムは1グラムより重いか?)
  4. 4.釘を打つのにハンマーを使うか?(木を切るのにハンマーを使うか?)

 

所見4

所見4の意識レベルもRASSで評価します.

 

RASS 0 以外であれば「所見4あり」となり,「せん妄あり」と判定されます.

 

RASS 0 の場合は,「所見4なし」として,「せん妄なし」と判定されます.

 

ICDSC(intensive care delirium screening checklist)

ICDSCは,8時間ごとに定期的に評価していき,その勤務帯での総合的な評価を行います.評価した時点から24時間以内で得られた情報を基に点数をつけます.

 

8点満点で,4点以上をせん妄と判定します.「せん妄のあり・なし」にかかわらず,せん妄の程度(強弱)を評価できるかもしれません.

 

表1ICDSC(intensive care delirium screening checklist)

ICDSC(intensive care delirium screening checklist)

 

前述したCAM-ICUとは異なり,今でなく過去のせん妄を評価します.直接患者さんに質問をしないので,患者さんの負担がありません.しかし,評価者がこのICDSCの情報を意識して拾わないと,せん妄を見落とす危険性があります.

 

CAM-ICUと同様,ICDSCは患者さんが覚醒していないと評価できないので,深い鎮静をされている場合(明らかに鎮静薬によって意思疎通が取れないと判断できる場合)や,意識レベルが低く,数日間評価ができないような状態の場合,適応されません.

 

ICDSCの欠点を示す報告があります.非人工呼吸管理患者さんも含めたICU患者さんにおいて,せん妄患者さんの99%をICDSCでせん妄と判定できますが(感度99%),せん妄でない患者さんの36%は誤ってせん妄と判定してしまう(特異度64%)という結果11)が報告されています.

 

つまり,多くのせん妄患者さんを発見できますが,せん妄でない患者さんを間違ってせん妄と判定している確率も高いということです.

 

one pointCAM-ICUとICDSCはどちらがよい?

CAM-ICUとICDSCがせん妄の評価にどれくらい有効か検討したメタ分析によると,ICDSCに比べてCAM-ICUの方が文献数が多く,また,CAMICUは感度80%(77-83%),特異度96%(95-97%),ICDSCは感度74%(65-81%),特異度82%(76-86%)12)とされ,CAM-ICUの方が高い有用性が報告されています.

 

また,ICUでは,患者さんのルート・ドレーン類の自己抜去の予測が重要ですので,その点では,せん妄の主症状である注意力欠如のテストに重点が置かれているCAM-ICUの方が適しているかもしれません.

 

とはいえ,CAM-ICUとICDSCの実際の使用にあたっては,それぞれ良い面,悪い面があるため,日常臨床実践に活かせればどちらでもよいと筆者は考えています.

 

コラム:せん妄予備軍(sub-syndromal delirium)

ある報告*において,ICDSC値が0点の患者さんに比べて,ICDSC値が1〜3点の患者さん(せん妄ではないと評価された患者さん)は,ICUにおける死亡率は上昇し,ICU在室日数や入院期間がせん妄患者さん(ICDSC値≧4)と同じ程度で,退院後も介護の転帰をとるとし,このような患者群をsub-syndromal(サブシンドローマル:せん妄予備軍!?)としています.

 

図3ICDSC値とICU死亡率の関連

ICDSC値とICU死亡率の関連

 

つまり,ICDSCでせん妄ではないと評価された患者群においてもなんらかのアプローチが必要であることを示唆しています.

 

ICDSCはせん妄に関連した症状が多く出現するほど高得点になるため,せん妄の「有無」のみでなく,せん妄の重症度を表すことができる可能性があります.

 

文献(*) Ouimet S et al:Subsyndromal delirium in the ICU:Evidence for a disease spectrum. Intensive Care Med 33(6):1007-1013, 2007

 


[引用・参考文献]

 

 


[Profile]
剱持 雄二(けんもつ ゆうじ)
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU 集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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