ICUで抑制をなくすにはどうしたらよい?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、抑制の必要性について解説します。

 

これだけはおさえておこう

  • 原理原則に従い,適切な鎮痛と鎮静を行います.
  • 抑制を行ってまで避けるべきリスクなのか,抑制で本当に避けられるリスクなのかをよく考えます.
  • 安全の確保に本当に必要な抑制まで,闇雲に否定しないようにしましょう.

 

〈目次〉

原理原則に従う

これまでに述べてきた抑制を行ううえでの要件,検討すべき事項についてしっかり考えましょう.

 

「そんなことはやっている.何をいまさら」と思われるかもしれません.

 

しかし,本当にそうでしょうか? もう一度じっくり考えてみる余地はありませんか? 原理原則に従うことで,ある程度,抑制を減らすことができるかもしれません.

 

原因をコントロールする

抑制を行うかどうか考えるのはどういう場面でしょうか?

 

多くの場合,患者さんが興奮状態にあったり,せん妄になったりしていることでしょう.裏を返せば,不穏・せん妄にならなければ抑制の必要性は減るということです.

 

では,なぜ不穏やせん妄になるのでしょうか? 考えられる原因やよくわかっていない部分もありますが,痛みや不快,不安は不穏やせん妄に関係します.それらがきちんとコントロールされているかを考え,確実な鎮痛,適切な鎮静を行います.

 

不適切な鎮静は,患者さんに新たな混乱を生む原因にもなります.

 

その切迫性は本物ですか?

「 患者本人または他の患者の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い」場合に,安全を確保するために,抑制が検討されます.

 

この「危険」の1つに,必要な医療機器の事故/ 自己抜去のリスクがあるわけですが,いつのまにか,「事故/ 自己抜去のリスク」の部分だけが1人歩きしていないでしょうか?

 

そのカテーテルは抑制してまで抜けてはいけないものなのでしょうか? 何度も抜かれているのであれば,常に入れて置く必要はあるのでしょうか?

 

原則に立ち返り,抜去のリスクの対象が「必要な医療機器」であり,「生命または身体が危険にさらされ」ているかどうか考えてみることは重要です.

 

また,詳細に検討する中で,今は必要なものであっても,必要でなくなる時期や状態がみえてくることもあります.ベッドサイドに付いて見守るといった現実的には難しい代替手段も,期間が限定されるのであれば,チームで十分対応可能になるかもしれません.

 

本当に安全の確保になっていますか?

ICUでの抑制は,患者さんの安全を確保するために取られる手段ですが,その抑制は,本当に安全の確保になっているのでしょうか?

 

抑制したことで想定したリスクは避けられたでしょうか? 抑制しなかった場合,そのリスクは避けられなかったのでしょうか?

 

危険の「可能性」への対応ですので,「有害事象が起こったから無駄だった」,「起こらなかったからそれでよい」という単純な話ではありませんし,同じ患者さんに抑制「する」「しない」を同時に選択できるわけではないので,客観的に評価することは簡単ではありません.しかし,本来の目的に適っているかどうか評価・検証することを忘れてはいけません.

 

何か有害事象が起こった際の「言い訳」として「とりあえず」「なんとなく」「暗黙の了解」で行う抑制は,即刻なくすべきです.

 

「縛っていたけれど抜かれた」などという,手技的に不備のある抑制を行うことなど言語道断です.

 

本当に抑制をなくすことが必要ですか?

抑制は極力避けるべきですが,ただ闇雲に否定すればよいというものではありません.

 

考えられる原因に対処し,他に取りうる手段がなく,今目の前にある危険に対して,抑制を行うことでリスクを減らすことができるのであれば,抑制を行わなければなりません.

 

このようなケースは一定数存在するはずです.善管注意義務に違反するからとかではなく,専門的視点で検証した結果,必要と判断されたのであれば,それは行うべきことなのです.

 

本当になくすべきなのは,「抑制は人権的に問題だからやっちゃだめ」とか「抑制しなきゃ仕事にならない」というような思考停止の態度ではないでしょうか.

 

患者さんにとって何が大切かという視点に立ち,さまざまな角度から複数のチームメンバーと検討して決定することが重要です.

 


[Profile]
武内 龍伸 (たけうち たつのぶ)
藍野大学医療保健学部看護学科

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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