ICUで抑制はどのような判断・手続きで行われている?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、抑制の判断と手続きについて解説します。

 

これだけはおさえておこう

  • 抑制実施の判断にいたる前には,適応と必要性をしっかりとチームで検討します.
  • 指示を受けたうえで実施し,観察とアセスメント,定期的な再評価を行います.
  • 以上のことを遅滞なく記録します.

 

〈目次〉

抑制を行う際に検討すべきことは?

1)適応と必要性の判断

抑制の目的(抑制の目的は?)で述べたリスクがある場合,抑制を行う適応があります.臨床的に必要と判断されたうえで,代替手段が上手くいかない場合や代替手段を取れない場合にのみ,抑制を行います.

 

痛みや不安,不快は不穏を引き起こします.したがって,適切に対処されていないものがあれば,抑制の前に,まずそれら自体への対応を行います.

 

また,低酸素血症や高炭酸ガス血症電解質異常による不穏の可能性も必ず考えます.人工呼吸器を装着している場合は,設定を見直すことも必要です.

 

抑制を行うことを決定する際には,抑制することで患者さんに与える不利益をよく考え,物理的・時間的に最低限の制限を検討します.

 

2)考慮すべき代替手段

鎮静薬や鎮痛薬など,薬剤による不穏への対処は,物理的な抑制の重要な代替手段です.

 

その他の代替手段としては,患者さんを落ち着かせるような働きかけや,苦痛をもたらしている医療機器から注意を逸らすことが考えられます.

 

密なコミュニケーション,家族や他の医療スタッフの協力,環境面の配慮や眠れないという状況の改善(アラーム音など不必要な感覚刺激を減らす,一日の生活リズムを整える),治療上のデバイスや固定を目に付かないようにする・剥がそうと思わないくらい大きくすることなどがあります.

 

気管チューブやカテーテルの自己抜去の大きな要因は,咽頭腔の痛みや違和感であり,長期的な管理が見込まれる場合には,気管切開や胃瘻造設により抑制を緩和できるかもしれません.

 

どのような手続きが必要なのか?

1)医師の指示

上記のことはチームで検討しますが,最終的な判断は医師が行います.抑制は,医師の指示(口頭または文書)を受けて行われます.

 

2)説明

緊急の場合は,事後になるかもしれませんが,抑制を行う判断にいたった理由,抑制によるリスクを患者さんや家族に説明します.必要時・可能時は,同意を得ます.

 

3)観察と再評価

抑制には,さまざまな合併症のリスクがあります.これには身体的なものだけでなく,精神的なものもあります(抑制は患者さんにどのような影響を与える?参照).

 

注意深く観察・アセスメントし,対応していく必要があります.

 

観察すべきポイントでは,合併症だけでなく,抑制により阻害されている患者さんのニードをとらえることも重要です.体位調整や飲水,排泄はもちろん,上肢の動きを制限されている患者さんは,ちょっと鼻が痒いといった欲求も自分で満たすことができません.観察の頻度は,どんなに空けても4時間ごと,興奮している場合には落ち着くまで15分ごとと推奨されています1)

 

また,定期的(少なくとも8時間ごと)に,抑制の必要性を再評価します.

 

開始時に検討すべき内容と同じです.解除できるかだけでなく,制限範囲を減らせないかという視点をもって行います.

 

4)記録

抑制にいたった緊急やむをえない理由(必要性と代替策の否定),抑制を行った事実・方法,時間(開始・解除),説明事項,患者さんの状態,観察された事項,再評価の内容などを記録します.

 

通常の記録と同様,適切なタイミングで記録していきます.

 

5)方針の明確化と基準・手順の整備

抑制を行うかどうかは,個別のケースごとに考えていくことではあります.

 

しかし,その施設・組織として,どのような考え方をもっているのか,どういった基準・手順に則って行うのかということを明らかにしておくべきです.それに沿ったうえで,個別性に応じて対応します.

 

図1拘束/抑制を判断する際のフローチャート

拘束/抑制を判断する際のフローチャート

 

記録が重要

抑制に法的な問題はない?」で述べたように,一般病床での拘束/抑制に関して具体的に定めた法令はありませんが,その違法性は,行ったことの問題・行わなかったことの問題という両面で,何度か裁判で争われています.

 

最高裁判例2)でも「入院患者の身体を抑制することは,その患者の受傷を防止するなどのために必要やむを得ないと認められる事情がある場合にのみ許容されるべきものである」と判示されています.

 

したがって,拘束/抑制を行う(行った)際には,「緊急やむをえないかどうか」ということについて,切迫性,非代替性,一時性を意識して,アセスメントの基となる事実と決定のプロセスを,わかりやく記録に残しておくことが重要です.

 

拘束/抑制をしないという判断を行った際にも,その旨をしっかり記録しましょう.

 


 


[Profile]
武内 龍伸 (たけうち たつのぶ)
藍野大学医療保健学部看護学科

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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