抑制とは|抑制の定義・目的・方法

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、抑制について解説します。

 

抑制について考えよう

重症患者さんには,気管チューブをはじめ多くのチューブ類が留置されており,それらの抜去事象は生命にかかわることもあります.

 

鎮痛・鎮静管理をうまく行うことで予防できればよいのですが,実際の臨床現場では,安全の確保のために,少なからず患者さんに「抑制」を実施しているのではないでしょうか?

 

抑制することは決して望ましい対応ではないことは,直感的におわかりだと思います.

 

抑制にはどのような悪影響や問題があるのかなど,さまざまな観点からみていきたいと思います.

 

これだけはおさえておこう

  • 抑制とは,全身または局所の動きや活動を制限することです.
  • 抑制は患者さんの安全を確保するために行われます.
  • 物理的な拘束の他,薬物による抑制,隔離による制限などがあります.

 

〈目次〉

抑制,身体拘束,行動制限の定義と違いは?

抑制,抑制法,身体(的)拘束(あるいは単に拘束),行動制限など,患者さんの動きを制限することに関する用語はいくつかあります.これらの用語の違いは何なのでしょうか?

 

結論から言うと,明確な違いは定まっていません.定義や基準,対象とする範囲などには流動的な部分や曖昧な部分が多く,施設や領域によっても異なります.

 

ただし,「身体的拘束」に関しては次のようなコンセンサスがあります.

 

昭和63年厚生省告示第129号「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十六条第三項の規定に基づき厚生労働大臣が定める行動の制限(平成12年題名追加)」では,大臣が定める行動の制限として,「患者の隔離」と「身体的拘束」が挙げられています.

 

その中で身体的拘束は「衣類又は綿入り帯等を使用して,一時的に当該患者の身体を拘束し,その運動を抑制する行動の制限をいう」と定義されています.また,この定義は介護保険や高齢者を対象とした領域でも踏襲されています.

 

精神科領域では「拘束」を使いますが,急性期領域では「抑制」を使うことの方が多いかもしれません.

 

「抑制」についていくつかの説明を挙げます.

 

  1. 患者の動きや身体の利用を制限することによって,病状の改善や,合併症の予防を目的とした処置のこと.(ACCCM task force 2001-2002 1)
  2. 抑制とは,治療上,身体的安全確保を目的として,道具(抑制帯,抑制衣など)を用いて身体をベッドなどに固定すること.(看護大事典2)
  3. 抑制法とは,患者の状態によってやむをえず,抑制帯や拘束衣などで,全身および局所の動作や運動を制限する方法で,患者の安全と安静保持のために行う.(看護学学習辞典3)

本連載では,特別な場合を除き,「抑制」で統一しています.

 

抑制の目的は?

患者さんの安全を確保することが,抑制の目的です.それ以外にはありません.

 

より具体的には,以下のようなことがあります.

 

  1. 必要な医療機器の事故/ 自己抜去のリスクを減らす.
    例:気管内チューブ,循環補助装置,動脈ライン,CV カテーテル,静脈ライン,頭蓋内チューブ・胸腔ドレーンなどの各種ドレーン,カテーテルなど
  2. 脊髄損傷の患者さんなど,動くことで新たな損傷を起こしたり,悪化したりする可能性のある患者さんの動きを制限する.
  3. 自傷行為や自殺企図のある患者さんの行動を制限する.
  4. 転落のリスクを減らす.
  5. 他者に危害を加える可能性のある患者さんの行動を制限する.

 

抑制にはどのような方法がある?

抑制には,大きく分けて物理的な抑制と,薬物による抑制とがあります.

 

抑制帯を用いた物理的拘束を「抑制」とするのは常ですが,薬物による抑制や隔離を含めるかどうか,治療のためのデバイスによる制限をどう考えるかなどは,場面や状況によって異なります.

 

(1)物理的な抑制

物理的な抑制は,抑制帯などを用いて動きや可動域を制限する方法であり,ミトンやメガホン型抑制帯を用いて手指の利用を制限することを含みます.

 

骨折の際のギプス,静脈ラインのシーネなどは,物理的に動きを制限しますが,通常抑制とは考えません.体位の制限(たとえば,頭蓋内圧亢進時の頭部挙上禁止)や創部の保護(創部のドレッシング材の固定や胸帯・腹帯は,動きの制限になっていますし,掻きたくても掻けない部分をつくっています)など,治療のための活動制限や固定も同様です.

 

(2)薬物による抑制

鎮静薬,精神安定薬,筋弛緩薬,鎮痛薬などを用いて,興奮状態や意識,麻痺をコントロールすることは,薬物による抑制と考えられます.

 

(3)その他の拘束 / 抑制

自分の意思で開けることのできない場所に隔離することも,拘束/ 抑制方法の1つです.

 


[文献]

 


[Profile]
武内 龍伸 (たけうち たつのぶ)
藍野大学医療保健学部看護学科

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

SNSシェア

看護知識トップへ