鎮静による弊害はどうやって防ぐ?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、鎮静薬による鎮静の弊害を防ぐケアについて解説します。

 

これだけはおさえておこう

  • 鎮静による弊害には,鎮静薬の使用量を減らすケア,浅い鎮静レベルを保つケア,鎮静薬による鎮静の期間を短くするケアが重要です.
  • 鎮静の期間を短くするケアを進めることは,早期離床やABCDE バンドルなどのアドバンスな考えにつながります.

 

〈目次〉

鎮静薬による鎮静の弊害を防ぐケアの3つの視点

これまで,鎮静薬による鎮静の弊害をみてきました.それでは,これらの弊害をどのようにして防げばよいのでしょうか?

 

それには,以下の3つの視点があります.順にみていきましょう.

 

  1. 鎮静薬の使用量を減らすケアを行う
  2. 浅い鎮静レベルを保つケアを行う
  3. 鎮静薬による鎮静の期間を短くするケアを行う

 

鎮静薬の使用量を減らすケア

鎮静薬を減らすには,鎮静の前に鎮痛を十分に行い,過鎮静を避けるのが基本です.

 

また,鎮静薬を減らすためには,なぜ鎮静が必要なのか,該当患者さんに対する鎮静の目標を十分にチーム内でカンファレンスし,目標となる鎮静深度を決定しておく必要があります.

 

そのうえで,不穏が原因で鎮静薬を使用している場合は,鎮静薬を用いないで解決できる問題がないか検討します.不穏の原因が低酸素血症,低血糖低血圧,薬物依存などであれば,鎮静薬の前に個別の対策が可能です.

 

不穏の原因には,不安・ストレスが大きいとされています.そのため,自己コントロールを促し,快適性を維持するようなリラクセーション,適切な鎮痛,頻繁なオリエンテーション,正常な睡眠が得られるような環境調整(栓をして騒音を遮ることも有効です),音楽や気分を変えるためのベッド位置の変更などのケアが,効果があることもあります.

 

これらは患者さんの治療上の阻害になりませんし,病状を悪化させるような侵襲的なものでもありませんので,積極的に行います.

 

痛みや不安・ストレスへの対応が不足すると,患者さんは苦しみ続け,ラインやチューブ類の自己抜去,人工呼吸器との不同調につながります.

 

人工呼吸器の換気条件が患者さんにとって適切なものかも観察します.同調性が悪い,換気・酸素化が不十分であると,ストレスやバイタルサインの悪化につながります.

 

one point

睡眠障害は,不穏(せん妄)の大きな原因となります.重症患者さんは断続的睡眠になりやすい(REM 睡眠が損なわれている)ため(Trompeo AC et al:Sleep disturbances in the critically ill patients: role of deliriumand sedative agents. Minerva Anestesiol 77(6):604-612, 2011),正常な睡眠が得られるような環境調整は重要です.

 

鎮静薬は睡眠薬ではありません.鎮静薬は寝かせる薬でなく,意識を消失させる薬なのです.したがって,患者さんが「寝ない」からといって,鎮静薬を増量しても睡眠の質はよくならず,弊害を大きくするだけです.

 

浅い鎮静レベルを保つケア

浅い鎮静レベルを保つことで,過鎮静の弊害を減らすことができます.

 

浅い鎮静レベルを保つには,鎮静の評価を適切に行うことが重要です.つまり,鎮静の評価を行う主な目的は過鎮静・過鎮痛を減らすことです.

 

RASSなどのスケールを使って評価を行い,常に減量や中止を念頭に置きながら,目標の浅い鎮静レベルに保つよう投与量の調整を行います.鎮静評価は鎮静薬が投与されているすべての患者さんに,定期的に行い,医療者間で評価結果を共有します.

 

浅い鎮静では,患者さんは覚醒しているので意思疎通が可能となり,患者さんは要望を伝えやすくなります.意思疎通には,筆談・読唇術・文字ボードなどを用います.また,患者さん自身でのケアが容易になり,自己コントロール感を得ることにもつながります.

 

適切な浅い鎮静の状態を維持するためには,看護師がいつも患者さんの意思やニードを引き出し応え続け,患者さん自身にコントロール感をもってもらうことが重要です.そうすることで,不穏の発生がおさえられ,結果,浅い鎮静や,鎮静薬の減量・中止にもつながります.

 

鎮静薬による鎮静の期間を短くするケア

鎮静薬による鎮静の期間を短くする方法として,1つは,患者さんの回復を早めることです.

 

回復が早まれば,人工呼吸管理も不要になり,鎮静も不要になります.そのためには,多職種によるベストな対処が求められます.

 

  1. 医師による治療計画
  2. 看護師による継続的な対応や頻繁なアセスメント
  3. 薬剤師による薬理作用の知識の活用,薬物療法
  4. PT・OTによる早期からのリハビリテーション
  5. MEによる人工呼吸器の調整

これらが合わさって,患者さんの早期の回復につながります.

 

この考えは,「早期離床」という考えに通じるものです.

 

もう1つは,積極的に鎮静薬を中断,減量し,早期の抜管を進めることです.

 

これには,鎮静薬を中断し患者さんの覚醒を促す自発覚醒トライアル(spontaneous awakening trail:SAT)や,SATがうまくいった場合にさらに患者さんの自発的な呼吸を促しウィーニング(抜管)を進める自発呼吸トライアル(spontaneous breathing trial:SBT)という方法があります.「ABCDE バンドル」がこれにあたります.

 

コラム:これからの鎮静管理

以前の人工呼吸器は,今より患者さんとの同調性が悪く,長時間作用型の薬剤を用いて鎮静する必要があり,まず寝かせて不動にする必要がありました.そのため,深い鎮静が必要だったと思われます.

 

しかし現在は,人工呼吸器の同調性はかなりよくなっています.その点からも,過鎮静は必要なくなっています.

 

また最近は,「鎮静薬で集中治療室の記憶をなくすことはせず,残しておくほうよい」という考え方が支持されています.

 

鎮静が浅ければ(または無鎮静であれば),患者さんは自分の置かれている状況を把握でき,混乱することは少なくなります.鎮痛薬で苦痛が緩和され,不安が除去されれば,過度な鎮静薬は必要ありません.

 

図1鎮静管理のこれまでとこれから

鎮静管理のこれまでとこれから

 

コラム:1日1回鎮静中断法の効果

下の図は,内科系ICUの研究で128人の人工呼吸中に持続鎮静を受けている患者さんを対象とした調査で,1日1回鎮静を中断する群(介入群)と通常の鎮静管理を受けた群に割り付けられたものです.

 

図21日1回 鎮静中断法の効果

1日1回 鎮静中断法の効果

 

結果,介入群では対象群よりも人工呼吸管理期間は有意に減少し,ICU滞在日数も減少し(院内在院日数は変化なし),ミダゾラムの合計投与量は介入群で減少(プロポフォール投与量は変化なし)しました.

 

(文献)Kress JP et al:Daily interruption of sedative infusions in critically ill patients undergoing mechanical ventilation. N Engl J Med 342(20):1471-1477, 2000

 


[Profile]
剱持 雄二(けんもつ ゆうじ)
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU 集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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