鎮静薬には何がある?|鎮静薬の目的・使用方法・種類・特徴

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、鎮静薬の種類・特徴について解説します。

 

〈目次〉

鎮静薬の目的・使用方法

鎮静薬は,一般的には「神経興奮を静める」,「大皮質中枢の異常興奮を抑制する」,「不安・不眠を静める」などの効果が期待されています.鎮静薬を使用することは決して“眠らせる”ことが目的ではありません.

 

患者さんのもともとの機能を低下させずに,苦痛を和らげ,心を平穏にし,落ち着きを促進することを目的に使用します.

 

呼吸ドライブ(呼吸中枢:呼吸をしなさいという命令)を抑制したり体動を減らしたりすることで,酸素消費量や基礎代謝量を抑える目的もあります.

 

鎮静薬の投与方法は,鎮痛薬と同じく持続静注が基本です.

 

代表的な鎮静薬

代表的な鎮静薬としては,ミダゾラム(ドルミカム®),プロポフォール(ディプリバン®),デクスメデトミジン(プレセデックス®)が挙げられます.

 

GABAA作動薬(ベンゾジアゼピン,プロポフォール)やオピオイドなどによる鎮静の効果,退薬症状として深く鎮静させる鎮静薬には,効果・薬理作用としてせん妄を誘発させる作用があり,注意が必要です.

 

* GABA(gamma amino butyric acid)とは,主に脳や脊髄で興奮を鎮めたり,リラックスをもたらしたりするなどの働きがある抑制性の神経伝達物質のこと.GABA の受容体には,GABAA,GABAB,GABAC の3 種類がある.

 

ミダゾラム(ドルミカム®

【作用・特徴】

ベンゾジアゼピン系薬剤であるミダゾラムは,中枢神経系にあるGABA 受容体を活性化します.鎮静作用,催眠作用,抗不安作用,健忘作用,鎮痙作用がありますが,鎮痛作用はありません.

 

プロポフォールなど他の鎮静薬と比較すると血圧を低下させにくいです.

 

蓄積性や離脱症状(薬剤を中断または減量したときに生じる症状のこと)を呈することがあるなどの特徴から,人工呼吸患者さんの鎮静薬としての使用は少なくなってきています.

 

【副作用・注意点】

ベンゾジアゼピン症候群(不安,不穏,発熱,頻脈,幻覚,痙攣など)があり,神経学的な評価が困難になる他,前向性健忘(投与時以降の記憶がなくなる)を起こしやすいとされています.

 

作用発現は早いのですが,作用持続効果が短いため,持続投与が必要となります.ただし,48 ~ 72 時間以上持続投与すると,投与中止後も鎮静効果が遷延する場合があるため,使用はできるだけ短時間にすべきです.

 

作用持続効果が短い一方,半減期は1.8 ~ 6.4 時間と長く,せん妄リスクが高いです.また,高齢者や肝障害,腎障害のある患者さんは代謝・排泄が遅延し,作用が強く現れるおそれがあるため,高齢者では注意した方がよいです.

 

【その他】

拮抗薬(ある物質・薬剤の作用を弱める薬物のこと)としてフルマゼニル(アネキセート® など)があります.

 

プロポフォール(ディプリバン® など)

【作用・特徴】

プロポフォールは中枢神経系にあるGABAA受容体などの中枢神経系に結合して神経伝達を阻害する鎮静薬です.

 

プロポフォールには鎮静作用,催眠作用,抗不安作用,健忘作用,制吐作用,鎮痙作用がありますが,鎮痛作用はありません.

 

長時間投与しても中止後短時間(10 ~ 15 分)で覚醒するので,ミダゾラムに比べて鎮静レベルを調節しやすいことがポイントです.

 

長時間投与後も,血中濃度がすみやかに低下し,鎮静作用が遷延しません.

 

【副作用・注意点】

用量依存的な呼吸抑制や全身性血管拡張作用による低血圧を起こしやすいため,急速投与しないよう単独ルートで管理するなど,細心の注意が必要です.

 

プロポフォールの溶媒として使用する脂肪乳化剤は脂質代謝を障害するため,肝障害がある患者さんの場合は,覚醒までの時間が遅延することもあります.

 

加えて,1%脂肪製剤で乳化させているため,約1.1 kcal/mL の成分が含まれており,1%ディプリバン® を10 mL/ 時で投与する場合,約11 kcal/ 時(1日に換算すると264 kcal)の脂質を補うことになります.また,脂肪乳化剤は細菌の温床になりやすいため,感染防止対策上,輸液ラインの12 時間ごとの交換が推奨されています.

 

添加物として卵黄,大豆油を使用していますので,卵,大豆アレルギーがある患者さんには使用を控える必要があります.

 

【その他】

まれに,プロポフォール注入症候群を発症することがあるため,48 時間以上の長期使用では,心電図(徐脈に注意),血液検査ではpH,CK(クレアチンキナーゼ),コレステロール中性脂肪のモニタリングが必要になります.

 

one pointプロポフォール注入症候群(propofol infusion syndrome:PRIS)

● 発症はまれですが,重大な副作用です.
● 代謝性アシドーシス,徐脈を伴うショック,横紋筋融解症からの腎不全,高カリウム血症,脂質異常症脂肪肝などを起こします.
● 病態は不明ですが,一般的には,ブドウ糖代謝障害からアシドーシスをきたすと考えられています.

 

デクスメデトミジン(プレセデックス®

【作用・特徴】

デクスメデトミジンは,中枢・末梢α2 アゴニスト(交感神経を抑制する物質)として,ノルアドレナリン放出を抑制して脳幹青斑に作用し,鎮静作用を発現します.生理的な睡眠を誘発するため,せん妄が出現しにくいという特徴があります.

 

デクスメデトミジンには鎮静作用の他に,延髄にある自律神経を抑制し,副交感神経亢進させるため,各臓器の保護効果も期待されています.心筋保護作用,腎保護作用,消化管機能維持,シバリング抑制作用,免疫細胞保護,抗炎症作用,脳細胞保護作用などがあります.

 

鎮静薬ながら,脊髄後角に作用し,鎮痛作用もあるのが特徴です.脊髄に分布するα2 受容体を刺激し,痛みの伝達を抑制します.

 

フェンタニルを用いて鎮痛を行う場合,鎮痛作用のあるデクスメデトミジンを併用することで,オピオイドを減量することができ,オピオイドの副作用(呼吸抑制や便秘など消化管抑制)を軽減できます.

 

デクスメデトミジンには呼吸抑制はほとんどなく,気道反射や中枢換気応答が維持できるため,非挿管患者さんにも適応があります.

 

◎非挿管患者さんの適応例:
解離性大動脈の血圧管理,くも膜下出血の術前管理,多発外傷症例,NPPV長期管理,小児,中毒性皮膚壊死症(Stevens-Johnson 症候群)など

 

【副作用・注意点】

刺激伝導系への影響は,β受容体遮断薬と同様にプロポフォールより強力な作用があり,とくに徐脈の出現に注意が必要です.

 

血圧の昇降は個人差があります.

 

【その他】

デクスメデトミジンによる鎮静は,覚醒した際に意思疎通が図れる状態を維持して鎮静できるので,患者さん自身が要望を伝えやすく,ケアに参画してもらいやすくなります.ただし,刺激に対して容易に覚醒するので,深い鎮静には適しません.

 

使用機会が増えているデクスメデトミジン

デクスメデトミジンは,ミダゾラムやプロポフォールなどのようなGABA作動薬ではないため,認知機能を維持した鎮静を行うことができます.

 

延髄にある自律神経を抑制し,交感神経を抑制させ副交感神経を亢進させることで,筋保護作用,腎保護作用,消化管機能維持,シバリング抑制作用,免疫細胞保護,抗炎症作用,脳細胞保護作用などが期待されています.

 

ミダゾラムと比べると,デクスメデトミジンの方がせん妄を起こしにくいという研究報告もあり注目されています(図1).

 

鎮静方法として,デクスメデトミジンを有効に使って,オピオイド増量・ベンゾジアゼピン系薬剤使用を回避し,向精神薬としてハロペリドール,リスペリドン,クエチアピンを補助薬として用いることは有効かもしれません.

 

図1鎮静薬とせん妄発症率

鎮静薬とせん妄発症率

 

※ 24 時間以上の人工呼吸管理が必要と予想された375 例のICU 患者さんにおいて,鎮静薬にミダゾラムを用いた場合とデクスメデトミジンを用いた場合を比べた研究です(多施設前向き二重盲検無作為試験).治療期間が24 時間以降から,ミダゾラムの方がせん妄を高率に引き起こすと報告されました.
[Riker RR et al:Dexmedetomidine vs midazolam for sedation of critically ill patients:a randomized trial. JAMA 301(5):489-499, 2009 より引用]

 


[Profile]
剱持 雄二
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU 集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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