鎮静の評価スケール

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、鎮静の評価スケールについて解説します。

 

これだけはおさえておこう

  • 不穏も過鎮静も患者さんに悪影響をもたらすため,鎮静が必要か,適切な鎮静レベルにあるかを,スケールを用いて適切に評価し,医療者間で共有する必要があります.
  • 不穏・鎮静の評価スケールでよく使用されているのは,RASS とSAS です.

 

〈目次〉

なぜ鎮静の評価スケールが必要か?

鎮静とは,患者さんの安静や睡眠を維持・改善するために,苦痛や不安を和らげることでしたね.

 

苦痛や不安が緩和されないと,不穏やせん妄を生じてしまいます.不穏やせん妄は,さまざまな事故・危険につながりますので,不穏を早期に発見し,対処しなければなりません.

 

また,鎮静薬によって鎮静を行っている場合は,鎮静薬によるさまざまな副作用や弊害を少しでも軽減するため,また,早期の離床を進めるためにも,目標とする鎮静レベルよりも深い鎮静(過鎮静)にならないよう,鎮静深度を上手く調節する必要があります.

 

そこで,不穏・鎮静の評価スケールが必要になります.

 

なお,睡眠を維持・改善するために鎮静を行いますが,鎮静薬による鎮静もまた睡眠覚醒のリズムを崩す原因になります.

 

睡眠覚醒リズムの崩れからせん妄の発症につながらないように,鎮静の評価を適切に行い,睡眠覚醒リズムを保っておくことが重要です.

 

one point

PAD ガイドラインでは,鎮静の評価および鎮静薬のコントロールを強く推奨しています.

 

すべての患者さんに対して定期的に客観的なツールを用いて,鎮静の深度および質の評価を行うことが重要です.

 

代表的な不穏・鎮静の評価スケール

鎮静レベルの評価法には,最もメジャーなスケールであるRASS(Richmond agitation-sedation scale,リッチモンド不穏・鎮静スケール)の他,SAS(sedation-agitation scale,鎮静・不穏スケール)やラムゼイ鎮静スケール(Ramsey sedation scale)などがあります.

 

よく,GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)やJCS(ジャパン・コーマ・スケール)などの意識レベルの評価ツールを用いることがありますが,これらは,頭部外傷や脳卒中の評価のために作成されたものであり,鎮静中の患者さんの評価には適していません.

 

鎮静の目的であった不安などを評価する項目がないからです.

 

ここでは,RASS とSAS について実際のスケールを紹介したいと思います.

 

one point

PAD ガイドラインでは,RASS とSAS は,ICU 患者さんにおける鎮静の質および深度を評価するうえで最も妥当かつ信頼性のあるツールとされています.

 

日本呼吸療法医学会の「人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン」や日本版PAD ガイドライン(J-PAD ガイドライン)ではRASS を推奨しています.

 

RASS(Richmond agitation-sedation scale)

RASS は,表1のように評価方法の指針があるため評価が行いやすく,評価する医療者間で誤差が生じにくいのが特徴です.

 

ステップ1 では,30 秒間患者さんを観察し,0 ~+ 4 点かを判断します.

 

ステップ2 では,①大声で患者さんを呼ぶか,開眼するように声をかけ,②10 秒以上アイコンタクトができなければ繰り返します.③動きが見られなければ,肩を揺するか,胸骨を圧迫します.

 

− 3 までは声かけにより評価し,アイコンタクトの有無がポイントです.− 4,− 5 は身体刺激が必要です.

 

表1RASS(Richmond agitation-sedation scale)

RASS(Richmond agitation-sedation scale)

 

●評価方法の指針
〈ステップ1〉
30 秒間患者さんを観察する.

 

  • 患者さんは意識が清明で穏やかなら,スコア0
  • 患者さんは落ち着きがない,あるいは不穏とされるような行動がみられるなら,スコア+ 1 ~+ 4(判定条件を参照)
     

〈ステップ2〉
患者さんが覚醒していない場合,大きな声で患者さんの名前を呼び,開眼し,こちらを見るように指示する.
必要であればさらに1 回繰り返し,こちらを持続的に見るよう促す.

 

  • 開眼し,アイコンタクトが取れ,それが10 秒を超えて継続するのなら,スコア- 1
  • 開眼し,アイコンタクトが取れるが,それが10 秒を超えて継続しないのなら,スコア- 2
  • 声に対してなんらかの動きがあるが,アイコンタクトが取れないのなら,スコア- 3

〈ステップ3〉
患者さんが声に反応しない場合,肩をゆすり,それに反応がなければ,胸骨を圧迫する.

 

  • これらに対し動きがみられるのなら,スコア- 4
  • 声にも身体刺激にも反応しないのなら,スコア- 5

[卯野木 健ほか:Richmond Agitation-Sedation Scale 日本語版の作成,日集中医誌17(1):73-74,2010より引用,一部改変]

 

one point

医師からRASS がいくつになるように鎮静薬を調節するというような包括的な指示を事前に得ることで,看護師によって患者さんに合わせた鎮静深度を調節することができます.

 

鎮静薬は患者さんに応じて積極的に減らしていきましょう.

 

SAS(sedation-agitation scale)

不穏の評価は,5 ~ 7 の3 段階ですが,5 と6 のレベルは,声かけによって制止できるかどうかで区別されているのが特徴です.

 

RASS のように評価方法の指針がないため,SAS ではなくRASS を用いている施設も多いかもしれません.

 

表2SAS(sedation-agitation scale)

SAS(sedation-agitation scale)

 

適切な鎮静レベルとは?

鎮静薬による過鎮静は,せん妄の発症や,回復・離床が遅れるなど,さまざまな副作用や弊害があるので,なるべく浅い鎮静レベルを目標に設定し,コントロールする必要があります.

 

鎮静の目的を考え,その患者さんにとってどのような鎮静が適切なのかを考えます.

 

患者さんによって最適な鎮静深度は異なりますので,医師や他のメディカルスタッフとカンファレンスし,目標を明確にします.とくに看護師は,ベッドサイドで常に患者さんを看ているので,先頭を切ってコーディネーションしていく役割があります.

 

鎮静レベルの目標を達成するためには,痛みや鎮静レベルの再評価を頻繁に行う必要があります.痛みや不安などへの対処が不足してはいけません.

 

鎮静薬のみで適切な鎮静レベルになることもあります.

 

気管挿管されている患者さんに対して,気管チューブの抜管などの事故を防ぐためにと鎮静薬をすぐに投与するのではなく,まずは気管挿管されていることをきちんと説明し,理解を促します.

 

患者さんは気管チューブやライン類が体に入っている自分の姿が見えないため,おかれている状況を理解できていないかもしれません.鏡で自分の姿を見せて説明するとよいでしょう.状況をきちんと理解してもらえれば,抜管・抜去のおそれも低減します.理解を促すためには,鎮静は浅い(あるいは無鎮静の)必要があります.

 

また,発声できないストレスは計り知れません.その点からも,文字盤や筆談などを使っていつでもコミュニケーションが取れる意識レベルに維持することが望ましいと言えます.

 

one point

PAD ガイドラインでは,RASS の評価を以下のようにしています.

 

・RASS 0:落ち着いて覚醒している
・RASS - 1 ~- 2:浅い鎮静深度
・RASS - 3 ~- 5:深い鎮静深度

 

また,PAD ガイドラインでは,臨床的に禁忌がない限り,深い鎮静深度よりは浅い鎮静深度に調整することを推奨する(+1B)としています.

 


[文献]

 


[Profile]
剱持 雄二
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU 集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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