痛みの評価スケール

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、痛みの評価スケールについて解説します。

 

これだけはおさえておこう

  • 患者さんが痛みを感じる状況や痛みの程度をスタッフ間で共有し,適切な鎮痛管理をするためには,スケールを用いた痛みの評価が必要です.
  • 患者さんが自分で痛みを訴えることができる場合は,主観的な痛みの評価スケールであるNRS やVAS,FPS などを用い,自分で訴えることができない場合は,客観的な痛みの評価スケールであるBPS やCPOT などを用います.

 

〈目次〉

なぜ痛みの評価スケールが必要か?

ビギナー編1(鎮痛・鎮静管理はどのような流れで行う?)でみてきたように,重症患者さんにおける鎮痛・鎮静管理では,まず適切に鎮痛を行うことが基本であり,最も重要なことです.鎮痛がうまく行われているかは,患者さんがどれくらいの痛みを感じているかによって評価されます.

 

痛みとは,本来,主観的なものですから,数値化するのはそぐわないものかもしれません.しかし,患者さんが平常時やさまざまな処置・ケア時にどのくらいの痛みを感じているのかによって,鎮痛薬の投与量を調整したり,ケアや処置のしかたを工夫したり,鎮痛薬の効果をみたりする必要があります.

 

また,その痛みを感じる状況と痛みの程度を,スタッフ間で共有しないといけません.

 

そのため,患者さんの痛みを数値や視覚で表す評価スケールを用いる必要があります.

 

代表的な疼痛スケール

代表的な疼痛スケールを表1に示します.

 

表1代表的な疼痛スケール

代表的な疼痛スケール

 

患者さんに意識があり,自分で意思を表示できる状態であれば,本人の主観的な痛みの程度を表現してもらうことが可能です.この場合,主観的な評価スケールを用いることができます.

 

一方,重症患者さんは自分で痛みを訴えることができないことが多く,その場合には,医療者が客観的に評価する必要があります.この時に用いられるのが,客観的な評価スケールです.

 

1主観的な痛みの評価スケール

簡便に即座に評価できる利点はありますが,さまざまな注意点があります.

 

どの主観的な痛みの評価スケールを用いるにしても,①患者さんに評価スケールの目的や使用方法などを説明し理解してもらうこと,②患者さんが自分の痛みを(ある程度)的確に表示することができること,が必要になります.高齢で認知機能が低下している患者さんや,不安などが強く精神状態が安定していない患者さんでは,適切な評価は難しいでしょう.

 

また,重症患者さんの鎮痛管理は,痛みを適切に評価し,それに応じて鎮痛薬の投与量を調整します.バラツキのある患者さんの主観的な評価に依存して投与量を決めるのは,信頼性が高い方法とは言えません.

 

したがって,重症患者さんの鎮痛管理では,客観的な評価が必要です.

 

図1NRS(numerical rating scale,数字評価スケール)

NRS(numerical rating scale,数字評価スケール)

 

図2VAS(visual analogue scale,視覚的アナログ評価スケール)

VAS(visual analogue scale,視覚的アナログ評価スケール)

 

図3FPS(face pain scale,フェイスペインスケール)

FPS(face pain scale,フェイスペインスケール)

 

表2PHPS(Prince Henry pain scale,プリンス・ヘンリー疼痛スケール)

PHPS(Prince Henry pain scale,プリンス・ヘンリー疼痛スケール)

 

[Movafegh A et al:Post-thoracotomy analgesia ̶ comparison epidural fentanyl to intravenous pethidine. Middle East J Anesthesiol 19(1):111-122, 2007 より筆者翻訳して引用]

 

2客観的な痛みの評価スケール

客観的な評価スケールは,患者さんの意識の有無や,意思表示の可否にかかわらず使用可能です.また,評価者が変わっても評価がぶれにくいのもメリットです.

 

一方で,客観的な評価スケールにも注意点があります.

 

鎮静が深いと患者さんは痛みを表出しなくなり,適切に評価ができません.また,上肢や体動・筋緊張などの項目がありますが,麻痺や障害などがあり痛みがあっても上肢や体動・筋緊張に現れていないだけかもしれません.

 

目の前の患者さんにその評価スケールが適切に使用できるのか,確認することが大切です.

 

BPS(behavioral pain scale)

患者さんが人工呼吸管理中で,直接疼痛の自己申告が不能な場合,運動機能が保たれていれば,BPSは妥当かつ信頼性のあるスケールです.

 

BPS では患者さんの表情,上肢の動き,人工呼吸器との同調性の3項目について,それぞれ4段階のスコアをつけます.人工呼吸管理中でコミュニケーションを十分に取れない患者さんでも痛みの評価を行うことができます.

 

スコア範囲は3~12点で,5点以上は強い痛みと評価します.BPSの作成者は,2時間おきに評価することを推奨しています.

 

表3BPS(behavioral pain scale)2)

BPS(behavioral pain scale)

 

CPOT(critical-care pain observation tool)

患者さんの表情,身体の動き,人工呼吸器との同調性または挿管していない患者さんでは発声,そして筋緊張の4つの項目からなり,それぞれ3段階のスコアをつけていくスケールです.

 

CPOTは意識レベルに関係なく,疼痛に関する有害な刺激に反応が表現されることによってスコアリングできることが示されています3)

 

各項目は0から2点で得点され,スコア範囲は0~8点で,3点以上は強い痛みと評価します.

 

BPSは人工呼吸管理が前提ですが,CPOTは挿管・非挿管どちらの場合にも使用でき,人工呼吸管理前後を通しての評価が可能である点が特徴です.

 

表4CPOT(critical-care pain observation tool)2)

CPOT(critical-care pain observation tool)

 

 

適切な鎮痛レベルとは?

鎮痛薬が投与され,痛みを感じていなければ,理想的な鎮痛が行えていると判断します.

鎮静

 

しかし,鎮痛薬としてよく使用されるオピオイドには,便秘,悪心・嘔吐や,呼吸抑制などの副作用があるので,過剰投与はよくありません.BPS≧5,CPOT≧3は強い痛みを感じているとされているので,これを超えないことを鎮痛レベルの目安にするとよいかもしれません.

 

オピオイドを投与している場合で,眠気が強い,呼吸抑制の出現など副作用を思わせる症状が現れた場合,過量投与を考え,30~50%程度を目安に減量していきます.

 

呼吸抑制が起こる前には,痛みの消失……傾眠……縮瞳などの前駆症状があります.痛みを訴えたまま呼吸抑制が起こることはまずありません.

 

呼びかけに反応しなかったり,呼吸回数が少ない(5回/分以下)場合は,ナロキソン投与を考慮します.

 

CULUMN血圧上昇や頻脈は痛みの指標となる?

ICUにおける日常臨床ではよく,「血圧が上がってきたから痛そう」とか「タキってきた(頻脈になってきた)ね.痛いのかな」と血圧上昇や頻脈を痛みの指標とすることがあります.これは,本当に患者さんの痛みの訴えとなっているのでしょうか?

 

確かに痛みは,身体的ストレスから内因性カテコラミンなどを放出させ,心臓・血管系に収縮期血圧上昇や心拍数増加といったバイタルサインの変化を引き起こします.他にも,痛みがあれば不眠を起こし,食欲行動・意欲を減退させ,心配や不安を募らせます.

 

しかし,重症患者さんにおいては,痛み以外の原因によっても,血圧上昇,頻脈が生じえます.「血圧上昇や頻脈があるから痛いんだ」などと安易に判断せず,さまざまな可能性をアセスメントすることが重要です.

 


[文献]

 


[Profile]
剱持 雄二
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU 集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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