せん妄と環境への不適応との違いはどう判断すればよいですか?

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、せん妄と環境への不適応の違いについて解説します。

 

せん妄と環境への不適応との違いはどう判断すればよいですか?

 

せん妄による情動・行動変化と,環境への不適応の結果としての情緒的反応や短絡的・衝動的行動は,一見見分けがつきにくいことがあります.
しかし,せん妄の場合は,これらの変化の下に,軽度の意識障害や注意障害,「注意を集中し,維持し,また他に転じる能力の障害」が存在します.

 

〈目次〉

ストレスの多い入院生活がせん妄や不適応反応を引き起こす

普段の生活や人間関係からの隔絶,病状への不安や喪失感,入院による環境変化,種々の検査・治療による心理的負担や恐怖・痛みなど,入院に伴うあらゆる環境変化や医療行為が,患者さんにとっては重大なストレス要因となります.

 

せん妄では,度重なるストレスが交感神経系を刺激し,副交感神経系の働きを弱める結果,不安や恐怖,焦燥,無感情,困惑などの感情変化が生じます.

 

同様に,入院に伴うさまざまなストレス要因から,「環境への不適応」として,①怒りや強い不安,恐れなどの情緒的反応,②無断離院・無断離棟,検査・治療行為への拒否といったストレス要因からの逃避行動,③職員への暴言・暴力などの短絡的・衝動的なふるまいが生じます.

 

環境への不適応

しかし,「環境への不適応」の場合,見当識や注意力は通常損なわれません.幻覚も通常生じません1)

 

たとえば,治療への強い恐怖や忌避から,無断離院したとしても,交通機関を使って,正確に自宅に戻るなど,1つ1つの行動は目的にあったものとなります.

 

また,不適応の背景には,元来の個人的素質やストレスへの脆弱性が関係しており,普段のストレス対処様式の延長線上で,不適応行動を理解できることも多いのです.

 

せん妄

一方,せん妄では,注意の集中を保つことがむずかしく,情動や行動の一貫性や合理性も失われていることが一般的です.

 

そして,せん妄による情動や行動表出は,通常,一過性で,変わりやすく,普段の患者さんの性格や情動・考え方・行動とはかけ離れていることが多いのです.

 

また,夜間に激しい情動や行動を現したにもかかわらず,翌朝には,前夜のエピソードを覚えていなかったり,記憶があいまいであったりすることも,多くのせん妄患者さんでみられる特徴です.

 

せん妄と環境への不適応を見分けるポイント

このように,せん妄には軽中等度の意識の曇り(見当識障害や注意障害)があり,記憶障害などの認知機能障害があるため,情動や行動に一貫性がなく,短時間で変動するという点をとらえることが,せん妄と環境への不適応とを見分けるポイントとなります.

 


[文献]

  • 1)Tueth MJ : Management of behavioral emergencies. Am J Emerg Med 13(3) : 344-350,1995

 


[Profile]
渡邉 博幸
千葉大学社会精神保健教育研究センター

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

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