鎮痛と鎮静はどのような関係にある?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、鎮痛と鎮静の関係について解説します。

 

これだけはおさえておこう

  • 鎮静薬には鎮痛効果はありませんし,鎮痛薬にも十分な鎮静効果はありません.
  • 重症患者さんには,鎮静の前にしっかりと鎮痛を行う必要があります.

 

〈目次〉

鎮痛と鎮静の関係とは?

前述(鎮静とは?)のように,鎮静とは患者さんの苦痛や不安を和らげることであり,広い意味で鎮痛も含んでいると言えると述べました.

 

苦痛や不安を和らげる方法として,患者さんの生理学的な要因の除去や,非薬物的な対応(説明や環境調整など)もありますが,ここでは薬物療法である鎮痛薬と鎮静薬を中心に,鎮痛と鎮静の関係をみていきましょう.

 

鎮痛薬と鎮静薬の関係

鎮静薬によって患者さんのすべての苦痛や不安が和らぐなら,最初から鎮静薬を投与してもよいかもしれません.しかし,通常,鎮静薬には鎮痛作用がありません.

 

痛みがあると,交感神経を刺激し,さまざまな身体的なストレスを与えることで不穏の原因にもなりますから,鎮静薬を投与していても痛みが除去されなければ,いつまでも鎮静が必要になってしまいます.

 

痛みが原因で苦痛が増し,鎮静薬を増量した結果,中々覚醒しないという状況はあってはなりません.繰り返しますが,鎮静薬による鎮静にはさまざまな弊害があるため,最小限にすべきなのです.

 

また,鎮痛薬にも,少し鎮静作用があるものもありますが,やはり鎮静薬の効果を兼ねることはできません.鎮痛薬だけで対処できる場合は,鎮静薬は必要ありませんが,適切に鎮痛して,さまざまな原因に対処してもなお不穏があれば,最終的に鎮静薬が必要になります.

 

つまり,鎮痛があって鎮静がある

以上のように,鎮痛・鎮静管理は,鎮痛薬と鎮静薬を適切に組み合わせることが必要になりますが,鎮痛が先にある,というところが重要です.

 

鎮静とは?」で述べたように,ICU などで集中治療を受ける重症患者さんは,さまざまな苦痛を受けていますから,十分な鎮痛なくして鎮静はありえません.鎮静を行う際には適切な鎮痛が達成されているべきなのです.

 

このような,鎮痛をしたうえでの鎮静という考え方は,鎮痛重視型鎮静(analgesia-based sedation)1)と言われることがあります.

 

あらかじめ鎮痛や鎮静を行うこともある

人工呼吸管理中の患者さんは痛みを訴えるための手段がないとされています2).気管挿管患者さんには通常,気管チューブ留置による違和感や痛みが伴っているため,その前提で,必ず鎮痛薬が投与されます.

 

また,侵襲的処置や疼痛を伴う可能性のある処置を行う場合は,先行して鎮痛薬の投与,およびリラクセーションなどの非薬物的療法の介入を行うことがよいとされています.

 

CULUMN眠っていても痛みは感じる?

事例で考えてみましょう.

 

夜間,消灯後,気管挿管中の患者A さんは眠っているようです.鎮静薬のプロポフォールが持続静注されていますが,ときどき苦痛顔貌があります.このとき,プロポフォールが増量されました.この後,どうなるでしょうか?

 

ボーラス投与してすぐは,短時間,深く鎮静されて苦痛顔貌も減りますが,半減期が短いため,すぐに効果が薄れます.プロポフォールには鎮痛効果はありませんから,その間もずっと痛みを感じ続けています.

 

覚醒したAさんは,痛みによるストレスと,さらにプロポフォールによって一時記憶を奪われたことから,覚醒後に興奮し,危険行動にいたりました.

 

Aさんの苦痛顔貌の原因は気管チューブによる咽頭部痛でした.必要なのは鎮静薬ではなく,鎮痛薬だったのです.眠っていても痛みは感じるものなのです.

 


[引用・参考文献]

 

  • 1)讃井將満:現代ICU 鎮静には鎮痛が欠かせない:analgesia based sedation とは.日臨麻会誌 31(3):422-431,2011
  • 2)Murray MJ et al:Analgesia in the critically ill patient. New Horiz 2(1):56-63, 1994

 


[Profile]
剱持 雄二
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU 集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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