不穏とは?せん妄とは?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、不穏・せん妄について解説します。

 

これだけはおさえておこう

  • 不穏とは,体動が激しく,興奮した状態です.
  • せん妄とは,注意と意識の障害です.不穏はせん妄の一症状です.
  • 鎮痛・鎮静管理がうまく行えているかは,不穏の有無に現れます.

 

〈目次〉

 

不穏とは?不穏が起きると何が困る?

不穏(agitation)の明確な定義はありませんが,穏やかでなく,体動が激しい・興奮しているなど,不安で危険をはらんだ精神状態を意味します.

 

不穏を発症すると,患者さん自身による気管チューブやライン類・ドレーンの抜去事象や,転倒・転落などのリスクが高まり,安全な治療・管理ができなくなります.そのため,重症患者さんに不穏を起こさせないこと,また,不穏が起きたらすぐに対処することが重要です.

 

不穏の原因は?

不穏の原因にはさまざまあります.

 

重症患者さんでは,

 

  • 酸素血症やアシドーシス(血液のpH が酸性に傾いた状態),血糖コントロール不良,低血圧などの生理学的要因
  • 手術侵襲や疼痛,消化管ガスの貯留や膀胱の充満などの身体刺激
  • 気管チューブの位置の異常などによる気管チューブの不快
  • 睡眠障害
  • 慣れないICU の環境や行動制限によるストレス,治療や今後への不安

などが原因で生じるとされています.

 

つまり,苦痛や不安が「不穏」として表出されるのです.

 

抑制され,「かゆいところも自分で掻けない」などの自己コントロールを失ったストレスも,不穏の原因となります.

 

不穏の有無は,「患者さんの苦痛や不安を和らげる」鎮痛・鎮静管理が適切になされているかの指標になります.

 

せん妄とは

せん妄(delirium)とは,機能障害が急性に発症し,精神状態の変化や変動,注意力障害,思考の混乱や意識レベルの変化がみられる症候群です.

 

随伴症状には,幻覚や妄想,睡眠障害,精神運動異常および情緒の障害(恐怖,不安,怒り,いらいら,抑うつ,無感情,多幸など)があります.情緒の障害は急速であり,情動は変化していきます.

 

ICU におけるせん妄の発症には,死亡率や認知機能などの長期的な予後の悪化も報告されており,予防や発症時の対応が必要です.

 

クリティカルな領域では,一見穏やかに見える低活動型のせん妄をとらえることが重要になります.

 

不穏とせん妄の違いは?

では,不穏とせん妄とは,どこが違うのでしょうか?

 

実は,不穏とせん妄における興奮状態に明確な違いはありません.米国精神医学会の診断基準であるDSM-5 では,不穏についての定義はなく,せん妄がある人にみられることがある情動の障害として,いらいら,怒りなどが示されているのみです.

 

ここで言えることは,不穏はせん妄の一症状であるが,せん妄の症状は多彩であり,不穏でないからといってせん妄が生じていないわけではないということ.そして一方で,鎮痛・鎮静管理を受けている患者さんが不穏を呈している場合,せん妄を発症している可能性が高いと考えられることです.

 

鎮痛・鎮静管理における不穏とは?

大事なことは,生理学的な要因や身体的・精神的なストレスが不穏を起こしているということです.つまり,適切な鎮痛・鎮静管理がなされていないことで,不穏を呈することがあるということです.

 

これまでの重症患者管理の現場では,「不穏だ」と言って,身体抑制を行ったり,鎮静薬を投与して済ませてしまうことがありました.

 

これからの重症患者看護には,適切な鎮痛・鎮静管理によって,不穏やせん妄を予防すること,また早期に発見し介入することが求められています.

 

one point

せん妄の発症には,直接的な原因の他,環境的な要因や,基礎疾患や高齢といった患者さん自身の要因も重なって発症すると言われています.
そのため,リスクに応じた予防や,発症原因に応じた対応が必要になります.

 


[Profile]
剱持 雄二
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU 集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

SNSシェア

看護知識トップへ