鎮痛とは?

『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座』より転載。
今回は、鎮痛について解説します。

 

これだけはおさえておこう

  • 鎮痛とは,患者さんの感じている痛みを和らげる(鎮める)ことです.
  • 痛みは生理学的に身体に悪影響を及ぼすため,鎮痛が必要になります.

 

〈目次〉

 

鎮痛とは,痛みを和らげること

重症患者さんは,日常的に何らかの身体的な痛み(疼痛)を感じていることが多いはずです.

 

たとえば,人工呼吸管理下にあれば,もともとの疾患・病態による痛みに加え,気管チューブの接触による咽頭部の痛みや気管チューブ固定による皮膚損傷の痛み,気管吸引などの処置に伴う痛み,ドレーンの刺入部や術後の創部の痛みなど,さまざまな痛みを感じています.

 

人工呼吸管理下にない患者さんでも,外傷や術後の創部痛,がん性疼痛などで,強い苦痛を感じている患者さんがいます.

 

それらの患者さんの痛み(pain)を和らげることを鎮痛(analgesia/アナルジージア)と言います.

 

鎮痛の基本は,メンタルケアを除けば,鎮痛薬の投与によって痛みを取り除く,または緩和することにあります.

 

患者さんの痛みはどのようにとらえる?

痛みは,「痛い」「痛くない」など,基本的には主観的なもので,患者さん本人による「痛い」という訴えこそが,痛みの評価のベースと言えます.

 

しかし,ICUの患者さんの多くは気管挿管されているため,声が出せず,自分で痛みを訴えることができません.また中には,手術時の麻酔からさめていない患者さんや,鎮静薬が投与されているため意識がない(覚醒状態を抑制されている)患者さんもいます.

 

このように,重症患者さんは自分で痛みを訴えることができないことが多く,痛みの評価は非常に難しいのです.そこで,疼痛スケールを活用することが推奨されます.

 

鎮痛はなぜ必要か?

鎮痛には,鎮痛薬を使用することになります.それでは,痛みは,患者さんが我慢できるなら,くすりを使わずに我慢したほうがよいのでしょうか?

 

痛みは,精神的な苦痛もさることながら,生理学的にも身体に悪影響を与えます.痛みを感じると,エネルギーの消費量が増え,免疫機能にも影響を及ぼします.重症患者さんにとっては無視できない影響となります.

 

また,痛いという刺激は交感神経を刺激することとなり,循環動態が不安定な場合,血行動態が悪化する可能性があります.

 

さらに,痛みは不穏やせん妄の誘因にもなります.不穏やせん妄になるとさまざまな弊害が生じます.

 

以上のことから,重症患者さんにおいて,適切な鎮痛管理がなされることが求められます.

 

one point

ICUで痛みがコントロールされずに過ごした患者さんは,心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder:PTSD)のリスクとなると言われています(卯野木健ほか:ICU 退室後の神経精神障害:外傷後ストレス障害と認知機能障害.日集中医誌 17(2):145-154,2010).

 


[Profile]
剱持 雄二
東海大学医学部付属八王子病院ICU・CCU 集中ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~』(監修)道又元裕、(編集)剱持雄二/2015年2月刊行

 

基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座~せん妄予防と早期離床のために~

 

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