脳波 (EEG:electroencephalogram)
看護師のための検査値の解説書『検査値早わかりガイド』より。
今回は、脳波(EEG:electroencephalogram)について解説します。
江口正信
公立福生病院部長
〈目次〉
脳波の定義
脳波とは、頭皮上の2点の電位差を記録したもので、振幅数によってα(アルファ)波、β(ベータ)波、γ(ガンマ)波、θ(シータ)波、δ(デルタ)波にわけられる。
脳波を調べることにより、脳の機能異常を知ることができ、てんかん、代謝性脳症、脳炎による意識障害、脳死など、病態の経過や治療効果の評価に用いられる。
正常脳波
脳波は被検者の年齢、意識レベルによって異なる。健常成人の正常脳波は(20〜60 歳の成人:安静・覚醒・閉眼時)、おもにα波とβ波からなる。α波は後頭部でよくみられ、少量のβ波が前頭部を中心に間欠的に出現。波形は左右対称性・同期性に現れる。
小児の脳波
小児の脳波は、成人に比べて脳波の周波数が少なく、振幅は大きく、左右差が多少みられる。脳波は脳の発達の程度に応じて変化するため、成長とともに脳波は変化(成人脳波に近くなる)する。
異常脳波
てんかん性異常
鋭波、棘波、徐波、棘徐波複合、鋭徐波複合からなる突発性活動が局在性・広汎性に出現する。
徐波
腫瘍や脳血管障害による脳の局在性破壊による局在性徐波。無酸素脳症、アルツハイマー病、代謝性脳症による広汎性徐波。
振幅の異常
局所的大脳皮質機能障害による非対称性の振幅低下。
異常脳波の賊活法
過呼吸
閉眼状態で1分間に20〜30回の頻度で3分間過呼吸を続ける。過呼吸では血中のPCO2が低下し、呼吸性アルカローシスを生じる。それにより脳血管の収縮、脳実質の乏血、脳波の徐波化などがみられる。
①正常でも現れる反応
build up:α波の電位が高くなり、周波数が減少する(徐波化)。低年齢ほど出現しやすく、過呼吸中止後1分以上続く場合、異常とする。
②てんかん性異常脳波
欠神発作:3Hz棘徐波複合、棘波群、徐波群が現れやすくなる。
閃光刺激
眼前15〜30cmの所にストロボスコープを置き、光の頻度(3〜30Hz)を変えて5〜10秒間連続して与える。断続的な光を続けて与えると、異常波が誘発されることがある。
①正常でも現れる反応
光駆動:光刺激の頻度に同期して後頭部優位に現れる波形。
②てんかん性異常脳波
光源性てんかん、欠神発作、ミオクローヌス型てんかんなど。
睡眠
睡眠中はけいれん発作が起こりやすく、覚醒中に現れなかった異常脳波が現れやすい。
脳波に関わる検査のポイント
検査時の留意点
- ①検査室は20℃に保ち、発汗や寒さのために筋電図が入らないようにする。
- ②患者に説明し、緊張を取り除く。頭皮、頭髪は清潔にし、ヘアピンなどははずす。
- ③安楽な体位をとらせる。
- ④抗けいれん薬、鎮静薬を2〜3日前から中止する場合があるので、けいれん発作には十分注意する。
- ⑤検査終了後は、髪に付いたペーストをよく拭き取るか洗髪をする。
- ⑥病歴やけいれん発作などの情報を得ておく。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 検査値早わかりガイド 第2版』 (編著)江口正信/2014年3月刊行/ サイオ出版