血液ガス|検査値早わかりガイド

看護師のための検査値の解説書『検査値早わかりガイド』より。

 

今回は、血液ガスについて解説します。

 

江口正信
公立福生病院部長

 

血液ガスの基準値

  • PO2:80~100[Torr(mmHg)]
  • PCO2:35~45[Torr(mmHg)]
  • pH:7.35~7.45
  • HCO3:23~28[mEq/L(mmol/L)]
  • SaO2:94~99(%)
  • BE:‒2.2~+1.2[mEq/L(mmol/L)]

 

〈目次〉

 

血液ガスの定義

血液ガスとは血液中に含まれるガスのことで、測定されるガスの種類は、おもに酸素分圧(PO2)、二酸化炭素分圧(PCO2)である。その他にpH、重炭酸イオン濃度(HCO3)、酸素飽和度(SaO2)、Base Excess(BE)が測定される。

 

通常、動脈血で測定されるが、小児などでは静脈血で測定する場合もある。

 

血液ガスの異常とその原因

 

 

PO2上昇の原因

肺胞過剰換気
  1. 過換気症候群:PCO2も同時に低下
  2. 呼吸中枢への刺激:薬剤など
  3. 採血時に気泡が混入した場合

 

PCO2上昇の原因

肺胞低換気
  1. 中枢神経障害:血管障害・脳腫瘍
  2. 薬剤:麻酔・鎮静薬
  3. カリウム血症:利尿薬投与
  4. 甲状腺機能低下症
呼吸筋・神経障害
  1. 進行性筋萎縮症
  2. 重症筋無力症
  3. ポリオ
肺・胸膜疾患
  1. 肺実質の減少:肺腫瘍、無気肺など肺の容量が小さくなる
  2. 肺組織の拡張不全:肺線維症など肺が膨らみにくくなる
  3. 気道の閉塞:慢性気管支炎、喘息など空気が入りにくくなる
  4. 胸膜疾患:胸膜炎
  5. その他:気胸、胸水貯留

図1肺癌および肺気腫

 

肺癌および肺気腫

 

基準値 ■動脈血
PO2:80~100[Torr(mmHg)]
PCO2:35~45[Torr(mmHg)]
pH:7.35~7.45
HCO3− :23~28[mEq/L(mmol/L)]
SaO:94~99(%)
BE :-2.2~+1.2[mEq/L(mmol/L)]
■静脈血
PO2:40~50[Torr(mmHg)]
HCO3:24~31[mEq/L(mmol/L)]

PO2低下の原因

肺胞低換気
  • PO2上昇と同様
加齢
採血時に静脈血が混入した場合

 

PO2低下の原因

肺胞過剰換気
  • 過換気症候群
  • 肺塞栓
  • 肺水腫
  • 間質性肺炎
代謝性アシドーシス
  • 腎不全糖尿病ケトアシドーシス・ショックなど代謝因子の異常に よってpHが酸性に傾く状態
その他

図2癌性胸膜炎を合併した肺癌

 

癌性胸膜炎を合併した肺癌

 

 

 

 

表1酸塩基平衡の異常と疾患

酸塩基平衡の異常と疾患

 

 

血液ガスに関わる検査のポイント

検査時の留意点

  1. 注射器に針を付け、内筒を少量のヘパリンで湿らせておく(ディスポーザブル血液ガスキットの場合は必要ない)。
  2. 酸素吸入の流量や濃度、呼吸状態、体位など、検査前の状態を観察する。
  3. 医師が施行するが、患者に不安を与えず、確実に行えるように説明し、協力を得る。
  4. 穿刺部位は5分以上圧迫止血を行い、止血されていることを確認する。
  5. 出血傾向のある患者の場合は、とくに注意して止血を行う。
  6. 穿刺部位の出血、血腫、神経麻痺の有無を注意深く観察する。
  7. 採血後は注射器内に気泡がないことを確認し、ゴム栓などで針孔を塞ぐ。
  8. 測定までに時間がかかる場合は、ガス分圧とpH の変化を防ぐため、氷づけにした状態で検査室に提出する。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 検査値早わかりガイド 第2版』 (編著)江口正信/2014年3月刊行/ サイオ出版

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