「あの咀嚼音が耐えられない…」音嫌悪症のメカニズムが明らかに!

「音」に関する不満を強く訴える患者さんへの対応に困ったという経験はありませんか?「音」がトリガーとなって、強い怒りを示したり、パニックに落ちいったりといった症状が現れる、「音嫌悪症(ミソフォニア)」のメカニズムが明らかになりました。今回は、英BBCニュースから研究報告の内容をお伝えします。

 

 

音嫌悪症(ミソフォニア)とは

「音嫌悪症」とは、身の回りで日常的に聞かれる音のなかで、「咀嚼(そしゃく)音」や「呼吸音」といった特定の「音」に強い不快感を表す症状です。音嫌悪症の患者が示す反応は、黒板を鋭利なものでこすりつけたときの「キーッ!」という音を聞いたときに、多くの人が見せるような反応の比ではありません。

 

特定の音をトリガーとして表出する反応は「怒り」に近いものがあり、中には、パニック状態に陥るケースもあるのだそうです。さらに、通勤中や職場での音の刺激に耐えられず、離職を余儀なくされた事例も報告されています。

 

多くの人には何でもない日常音が、音嫌悪症患者にとってはつらい

8歳のころから20年以上もこの症状に悩まされているOlana Tansley-Hancockさん(29歳)は、「不快な音を聞くと脅威を感じ、とっさに襲い掛かりたい衝動にかられます」と話しています。

 

Olanaさんの場合、呼吸音、咀嚼音、こすれ合う音がトリガーとなるそうです。ポテトチップスを食べるときの音のように、多くの人には何でもない音にも彼女は反応してしまい、その場を立ち去るか、音を止めてもらう必要があると言います。また、電車でたった30分の通勤であるにもかかわらず、その症状のために、7、8回も電車を乗り換えなければならなくなり、3か月で仕事を辞めざるを得なくなりました。「職場でも、働いている時間よりも、泣いていたり、パニック発作に苦しんでいたりする時間の方が長かった」とOlanaさんは語ります。

 

現在、音嫌悪症の治療法は確立されていませんが、彼女は、症状を悪化させるカフェインとアルコールの摂取を避け、栓を活用することで、働けるようになったそうです。

 

明らかになった音嫌悪症のメカニズム

ニューカッスル大学医学部の研究チームは、音嫌悪症の患者さん20名と音嫌悪症の症状が見られない22名を対象に調査を行いました。被験者に「自然の音(例:雨音)「一般的に不快感を与える音(例:金切声)」「音嫌悪症の患者のトリガーとなる音」の3種類の音を聞いてもらいながら、MRIでを撮影したのです。

 

この結果、音嫌悪症の患者さんは、トリガーとなる音を聞いているときに、感情の処理や制御を行う島皮質前部が異常な興奮状態にあることが明らかとなりました。この反応は、「嫌気」ではなく「怒り」を示すもので、自然音や一般的に人が不快に感じる音を聞いている状態では見られませんでした。

 

上にもあるように、音嫌悪症の治療はまだ確立されていませんが、メカニズムが判明したことは、大きな一歩ではないでしょうか。患者さんの中には「○○の音が気になって眠れない」「△△の音が不快だから何とかしてほしい」などと、「音」に対する不快感を訴える人も少なくないと思います。こうした患者さんを「神経質な人」「わがままな患者」と決めつけずに、音嫌悪症の存在を頭の片隅において、訴えに対応していくことが必要です。

 

(文):A.Brunner

(参考):

Misophonia: Scientists crack why eating sounds can make people angry(BBC)

ストレスと脳(東邦大学)

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