カルタゲナー(Kartagener)症候群患者さんの聴診音

この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。

 

[前回の内容]

原発性線毛機能不全症候群の疾患解説

 

今回は、気道疾患である「カルタゲナー(Kartagener)症候群患者さんの聴診音」について解説します。

 

皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科准教授)

 

カルタゲナー症候群とは、原発性線毛機能不全症候群の一種です。
実は、原発性線毛機能不全症候群の患者さんの半分は、カルタゲナー症候群なんです。

 

半数の方が、カルタゲナー症候群だなんて聞くと、とても多く感じます。

 

ただ、原発性線毛機能不全症候群自体が珍しい疾患ですけどね。
原発性線毛機能不全症候群の患者さんで、さらに、慢性副鼻腔炎、気管支拡張症、内臓逆位の3つの症状が見られた方が、カルタゲナー症候群の患者さんになります。
こう聞くと、少ない感じがしませんか?

 

〈目次〉

症例:一般的なカルタゲナー症候群の患者さん

ここでは、原発性線毛機能不全症候群の一種であるカルタゲナー(Kartagener)症候群の患者さんの症例について簡単に紹介します。自分の担当する患者さんだと思って、イメージしてみてください。その後、実際の聴診音を聴いてみてください。

 

【70歳、男性】

 

主訴:1週間前からの湿性咳嗽と、労作時の呼吸困難感を契機に来院。

 

既往歴:以前から呼吸器系は悪いと言われていた。生まれつき、慢性副鼻腔炎の症状あり。子どもはおらず、精子の鞭毛運動不全を指摘されたことがある。

 

画像所見:胸部X線では左右の気管支拡張像と壁肥厚を認め、左下肺野には淡い浸潤影がある(図1)。

 

図1カルタゲナー症候群のX線画像所見

 

カルタゲナー症候群のX線画像所見

 

右肺:気管支の拡張が見られます(青色ライン)。
左肺:淡い浸潤影と気管支の拡張が見られます(黄色ライン)。

 

胸部CTでは、下行大動脈の位置が逆だったり、気管支の拡張が見られるため(図2)、呼吸細気管支レベルとその中枢の気道病変であることがわかります。

 

図2カルタゲナー症候群のCT画像所見

 

カルタゲナー症候群のCT画像所見

 

A:下行大動脈の位置が逆になっています(黒矢印)。
B:気管支の拡張(青色ライン)と、肺血管が埋もれて見えない状態(コンソリデーション)が見られます(黄色ライン)。

 

身体所見:SpO2 94%(室内気)、呼吸数 18回/分、血圧 140/80mmHg、脈拍 86/分。喀痰は緑色で、喀痰培養では緑膿菌が検出された。慢性副鼻腔炎、気管支拡張症、内臓逆位の3徴からカルタゲナー症候群と診断。

 

memo末梢気道に見える鳥の足跡のような陰影

カルタゲナー症候群の患者さんの胸部CT画像では、末梢気道にたくさんの鳥が歩いた跡のような陰影が見えることがあります(図3)。これは、線毛の機能異常により、分泌物が貯留し、炎症が引き起こされたことが原因です。

 

図3鳥が歩いた跡のような陰影が見えるCT画像

 

鳥が歩いた跡のような陰影が見えるCT画像

 

鳥が歩いた跡のような陰影(黄色ライン)と、気管支の拡張(青色ライン)が見えます。

 

また、この鳥が歩いた跡のような陰影は、「小葉中心性粒状影」と呼ばれます(図4)。

 

 

図4小葉中心性粒状影

小葉中心性粒状影

 

気管支のほかに、鳥の足跡のような陰影が見えています。

 

聴診音(1):右前胸部中肺野で聴いた音

 

 

 

ココを聴こう!

1秒手前、3.5秒頃、6秒頃、9秒頃:「ゴロゴロ」という音

 

1.5秒、4.5秒、7秒過ぎ:「ヒューヒュー」という音と、「グーグー」という音

 

  • 本症例では、吸気時に「ゴロゴロ」という水泡音が聴こえるのがポイントです。この音に気付きましょう。
  • 呼気時には、「ヒューヒュー」という笛音と、「グーグー」といういびき音も混在して聴こえます。

 

 

聴診音(2):喀痰喀出後の聴診音(右前胸部中肺野)

 

 

 

ココを聴こう!

1秒~2秒、4秒前後、6秒~7秒過ぎ:「ヒューヒュー」という音

 

2.5秒、5秒、8秒手前:「ゴロゴロ」という音

 

  • 本症例では、「ヒューヒュー」という笛音と、「ゴロゴロ」という水泡音が聴こえるのがポイントです。この音に気付きましょう。
  • 本症例では、聴診音(1)で聴こえていた水泡音は小さくなっていますが、笛音は変わらずに聴こえているのがポイントです。
  • 聴診音から、末梢気道が狭窄されていることが示唆されます。

 

 

聴診音(3):喀痰喀出後の聴診音(頸部)

 

 

 

ココを聴こう!

1秒前後、2.5秒~4.5秒、5秒~7秒、8秒~9秒:「ゴロゴロ」という音

 

1秒前、2.5秒~3秒、5秒~6秒、8秒:「グーグー」という音

 

  • 本症例では、「ゴロゴロ」という水泡音と、「グーグー」といういびき音(または笛音)が聴こえるのがポイントです。この音に気付きましょう。
  • 水泡音は吸気時に、いびき音(または笛音)は呼気時に聴こえます。

 

 

ナースへのワンポイントアドバイス

 

痰の喀出前と喀出後では、聴診音が変わってきます。聴診をする前には、患者さんの痰の状態を確認しましょう。

 

 

Check Point

  • カルタゲナー症候群の患者さんでは、「ゴロゴロ」という水泡音と、「ヒューヒュー」という笛音が聴こえる。
  • 頸部では、「グーグー」といういびき音も聴こえる。

 

 

[関連記事]

 

 

*聴診音は、筆者が実際の症例で収録したものです。そのため、一部で雑音も入っています。

 

 


 

[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科講師

 

[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授

 


 

協力:株式会社JVCケンウッド

 


 

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