肺結核に関するQ&A

 

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は「肺結核」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

肺結核ってどんな病気?

肺結核は、結核菌によって起こる肺の感染症です。結核菌を排菌している人のくしゃみなどによって飛んだ結核菌を吸入することによって空気感染します。

 

結核菌は気道から侵入しますが、病巣を形成するのは肺だけではありません。肺以外に病巣を形成した結核を肺外結核といい、頸部リンパ節結核、結核性胸膜炎、結核性髄膜炎、脊椎結核、腎・膀胱結核などがあります。肺外結核は、結核全体の約2割です。

 

結核菌が侵入すると生体はどんな反応を示すの?

結核菌は体内に侵入すると、まず呼吸細気管支や肺胞に定着し、それらの部位や所属リンパ節で免疫反応が起こります。

 

結核菌はマクロファージ内で生き続けます。樹状細胞、マクロファージなどの抗原提示細胞は、ナチュラルキラーT細胞、T細胞などへ抗原提示します。結核菌はこれらの細胞の活性化により傷害されます。

 

このような免疫機構が十分に働くと、結核菌に感染した病変は石灰化し、自然治癒に向かいます。一方、免疫機構が十分に働かなければ、結核を発症します。自然治癒に向かった場合でも、結核菌は残存しているため、数年後に再燃し、発症することがあります。

 

肺結核ではどんな症状が出現するの?

肺結核の初期には症状は出現しませんが、徐々に、2週間以上続く咳、痰、微熱、寝汗、全身倦怠感、食欲不振などが見られます。進行すると、喀血、呼吸困難、体重減少などが現れることもあります。

 

肺結核の診断にはどんな検査を行うの?

肺結核診断のためのおもな検査は、結核菌検査、胸部X線検査、QFT検査(クォンティフェロンTB ― 2G)、ツベルクリン反応検査などです。

 

結核菌検査は、喀痰や胃液、気管支洗浄液を検体として用い、塗抹検査や培養検査などを行います。結核菌は非常在菌であるため、塗抹検査で1つでも検出されれば確定診断となります。しかし、塗抹検査では見落とすこともあるため、培養検査も行います。

 

培養検査は、結果が出るまでに2週間ほどかかります。最近ではポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による結核菌ゲノムの証明による迅速診断が行われています。また、結核菌に感染した人のリンパ球からのインターフェロンγ産生を検出するQFT(クォンティフェロンTB ― 2G)検査も行われています。

 

胸部X線検査では、病巣の有無、部位、性状、広がり方などを見ます。

 

ツベルクリン反応検査は、皮内にツベルクリンを接種し、48時間後に発赤・硬結の有無と大きさを見る検査です。結核菌に感染していれば、陽性となりますが、BCG接種の既応があっても陽性になりますので注意が必要です。

 

肺結核の治療にはどんな治療法があるの?

肺結核の治療法には、複数の抗結核薬を併用する、多剤併用化学療法が標準です(表1表2)。多剤併用化学療法でも陰性化しない場合や、慢性膿胸が見られる場合などは、手術の適応となります。また、症状を緩和させるために、鎮咳薬、去痰薬、解熱薬が投与されたり、酸素吸入を行ったりします。

 

表1抗結核薬の種類と副作用

抗結核薬の種類と副作用

 

表2肺結核の初回標準治療法

肺結核の初回標準治療法

 

memo1結核罹患率の高い日本

結核は昔の病気と思われがちですが、日本は、先進国のなかでは非常に結核の罹患率が高く、決して昔の病気ではありません。確かに、1951年に制定された結核予防法や抗結核薬の開発により、一時は患者数が減少しましたが、1990年代後半から再び新規に罹患する患者が増えています。結核は感染症法(2007)では2類感染症に指定されており、罹患が確認されれば、ただちに保健所への届け出が必要です。

 

肺結核の看護のポイントは?

肺結核の急性期は、様々な症状を緩和することに重点を置き、患者の苦痛を軽減します。他人に感染する結核の場合は、感染予防対策を実施するとともに、隔離された患者の心理的ケアも必要です。

 

肺結核の回復期は、服薬治療に対するコンプライアンスを高めることが大切です。服薬の継続の必要性、治療薬の種類と用法、副作用などを説明し、服薬を継続できるよう援助しましょう。

 

なお、結核菌は空気感染しますので、排菌している患者の看護にはN95マスク(0.3μmの粒子を95%以上捕集することができるマスク)を使用しましょう。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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