小児気管支喘息に関するQ&A

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は「小児気管支喘息」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

小児気管支喘息ってどんな病気?

気管支喘息は気道の狭窄により、発作的な呼吸困難や喘鳴(ぜんめい)、咳嗽(がいそう)、喀痰などが繰り返し起こる疾患です。

 

小児気管支喘息はアレルゲンが関与するアトピー型であり、大部分は、5歳までに発症して10〜15歳までに治癒します。しかし、思春期や成人になっても治らなかったり、成人になってから再発することがあります。

 

小児気管支喘息ではなぜ気道の狭窄が起こるの?

気道の狭窄は、アレルギー反応により起こります。アレルギー素因(アトピー素因)のある小児が、ダニやホコリなどのアレルゲン(抗原)を吸い込むと、アレルゲンと免疫グロブリンE(IgE)が結合し、肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されます(図1)。

 

この化学伝達物質が、①気管支のまわりにある筋肉(平滑筋)を収縮させる、②気管支の血管を拡張させたり透過性を亢進させ、気管支粘膜の浮腫や腫脹を起こす、③粘液の分泌を亢進させる、という作用をします。その結果、気道が狭窄し、呼吸困難や喘鳴(ぜんめい)などが起こるのです。

 

気管支喘息の患児は気道の過敏性が高まっているので、粉塵(ふんじん)や寒冷などの少しの刺激でも、呼吸困難や喘鳴などが起こります。また、ストレス、疲労、運動なども発作の誘因となることがあります。

 

図1気管支喘息の起こるメカニズム

気管支喘息の起こるメカニズム

 

免疫グロブリンEってどんなものなの?

免疫グロブリン(immunoglobulin: Ig、memo1)は、抗体の作用があるタンパク質です。免疫グロブリンE(IgE)のほかに、免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンA(IgA)、免疫グロブリンM(IgM)、免疫グロブリンD(IgD)があり、それぞれ異なった特徴を持っています。IgEの特徴は、抗原と結合し、肥満細胞上で架橋するとアレルギー反応を引き起こすことです。

 

IgGは、血液中の免疫グロブリンの約75%を占めます。胎盤を通過することができるので、胎児に受動免疫を与えます。IgAは、水や唾液などに多く含まれ、粘膜をおおって病原菌の侵入を防いでいます。IgMは、感染の初期に合成されます。IgDは、リンパ球B細胞に発現します。

 

memo1免疫グロブリンの種類

プラズマ細胞(形質細胞)から産生される免疫グロブリン(イムノグロブリン、ガンマグロブリンとも呼ばれる)には5つのクラスがある。

 

①IgG 血清中に最も多く含まれる。胎盤を通過できる唯一の抗体。新生児は母親の胎盤から与えられたIgGが感染防御に重要な役割を果たす。
②IgA 唾液や涙、鼻汁、腸管分泌液などに多く含まれている。粘膜局所の防衛機能を担う。
③IgM 分子量の最も大きなタンパク質。IgM分子には抗原結合部が5つあり、IgGに比べて赤血球凝集能、細菌凝集能、溶血能、殺菌能などが高い。感染初期に産生される。
④IgD 血液中には含まれない。B細胞の細胞表面に発現する。
⑤IgE 血液中にごく微量に含まれる。リンパ球が産生し皮膚や気道な どで作用し、Ⅰ型アレルギー反応を引き起こす。

 

小児気管支喘息はどんな検査をするの?

おもに実施する検査は、アレルギー検査、肺機能検査、胸部X線検査、気道過敏性検査です。また、アレルギーは遺伝的要因が大きいため、家系内の喘息、じんましん、アレルギー性鼻炎などの有無を聞くことも欠かせません。

 

アレルギー検査ではどんなことをするの?

1つは血液を採取して、白血球中の好酸球とIgEを調べます。アレルギー疾患では、好酸球数とIgEが増加します。また、特異的IgEが陽性になります。

 

もう1つは皮膚反応です。前腕、背部の皮膚にアレルゲンのエキスを滴下し、その部位を針で刺すか掻きます。15分後に観察し、赤く腫れていれば陽性です。

 

小児気管支喘息における肺機能検査の所見は?

肺機能検査は、マウスピースを加えて、思いっきり息を吸ったり吐いたりしてもらい、排気量分画や努力性肺活量を調べる検査です。気管支喘息では、1秒率の低下、残気量の増大が認められます。肺機能検査は年長児以上に行います。

 

小児気管支喘息における胸部X線写真の所見は?

胸郭の拡張や横隔膜の下降が認められます。ただし、喘息発作の間欠期では正常なこともあるため、診断の決め手にはなりません。胸部X線検査は、診断のためよりも、喘息発作を繰り返すことで肺や気管支に影響が及んでいないか、皮下気腫や気胸などの合併症を起こしていないかどうかを調べるために行います。

 

喘息発作を起こしたらどうするの?

喘息発作は、小発作、中発作、大発作、重積発作に分類され、発作の程度に応じた対症療法が行われます。

 

小発作の場合は、水分補給や腹式呼吸、β2刺激薬(memo2)の吸入を行います。水分補給と腹式呼吸だけで症状が緩和することがあります。β2刺激薬を吸入すると、まもなく喘息発作は消失します。

 

中発作の場合は、水分を十分に補給するとともに、β2刺激薬を反復して吸入し、効果がなければアミノフィリン(memo3)の静脈注射あるいは持続点滴を行います。それでも十分な効果が得られない場合は、入院治療となります。また、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が95%未満であれば、酸素吸入を検討します。

 

大発作の場合は、入院治療が必要です。β2刺激薬の反復吸入とアミノフィリンの静脈注射あるいは持続点滴を行い、効果がない場合は副腎皮質ステロイド薬の静脈注射を行います。同時に、脱水の改善と痰を排出しやすくするための輸液と、酸素吸入も行います。それでも効果が得られない場合は、イソプロテノール(memo4)の持続吸入を行ったり、副腎皮質ステロイド薬の静脈注射を反復します。

 

重積発作の場合は、大発作の対症療法を十分に行い、同時に気管内挿管、人工呼吸など呼吸不全に対する管理を行います。

 

memo2β2刺激薬

気管支拡張薬の1つである。気管支平滑筋を弛緩させる作用があり、早く効果が現れる。吸入後15~30 分後に効果を判定し、効果がない場合は、20 ~30 分間隔で3回まで反復して使用できる。吸入薬のほかに経口薬と貼付薬もある。

 

memo3アミノフィリン

気管支平滑筋を弛緩させる働きと、炎症を抑える働きがある。

 

memo4イソプロテノール

交感神経を刺激して、気管支を拡張させる働きがある

 

喘息発作を起こしていないときはどうするの?

発作を予防するために、日常生活指導や予防療法を行います。日常生活指導では、喘息発作の原因になるホコリやダニを除去すること、喘息発作の軽減に効果がある各種の運動を行うこと、腹式呼吸の方法などを指導します。予防療法では、抗アレルギー薬や気管支拡張薬を使用します。

 

小児気管支喘息の看護のポイントは?

喘息発作が起こっているときは、発作の程度を把握し、症状を緩和するために体位、呼吸法、排痰を援助します。悪化のサインを見逃さないこと、対症療法が効果的に行われるように援助することもポイントです。

 

喘息発作が起こっていないときは、患児や家族が適切なセルフケア行動がとれるように指導することが重要です。適切なセルフケア行動とは、アレルゲンを除去する、予防薬を飲み忘れない、発作時は水分補給や吸入薬を適切に使用するなどです。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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