気胸に関するQ&A
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『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。
今回は「気胸」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
〈目次〉
- 1.気胸ってどんな病気?
- 2.気胸にはどんな種類があるの?
- 3.緊張性気胸ってどんな状態?
- 4.気胸のおもな症状は?
- 5.気胸の検査所見は?
- 6.気胸にはどんな治療を行うの?
- 7.穿刺脱気や持続脱気ってどうするの?
- 8.気胸の手術や胸膜癒着術ってどのように行うの?
- 9.気胸の看護のポイントは?
気胸ってどんな病気?
肺は、正常な状態では、臓側胸膜(肺胞膜)と壁側胸膜の間にはほとんど隙間がなく、胸膜腔内には空気は入っていません。ところが、何らかの原因で、臓側胸膜あるいは壁側胸膜が破れて胸膜腔内に空気が流入し、肺が空気に押されてしぼんでしまった状態(虚脱)が気胸です(図1)。
気胸にはどんな種類があるの?
気胸には、自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸があります。
自然気胸は、臓側胸膜が破れるもので、突発性自然気胸と続発性自然気胸があります。突発性自然気胸は、肺の表面に多く見られる気腫性嚢胞(ブラ、ブレブ、memo1)の破裂が原因と考えられています(図2)。長身や、やせ形の若年男性に多く見られます。続発性自然気胸は、慢性気管支炎、肺気腫、気管支喘息などの肺疾患が原因です。
memo1気腫性嚢胞(ブラ、ブレブ)
いくつもの肺胞が融合して、風船のように膨らんだものを気腫性肺胞という。ブラ(bula)は、肺胞が破れて臓側胸膜(外弾性板、内弾性板)が膨らんだものである。一方、ブレブ(bleb)は内弾性板が破れて、外弾性版のみが膨らんだものである。ブラは外弾性板と内弾性板の2枚でおおわれているため破れにくいが、ブレブをおおっているのは外弾性板だけなので破れやすい。
外傷性気胸は、交通事故などの外傷によって、壁側胸膜が破れて起こる気胸です。医原性気胸は、鎖骨下静脈の穿刺や人工呼吸器の装着など、医療行為に合併して、壁側胸膜が破れて起こる気胸です。
壁側胸膜が破れて起こる外傷性気胸と医原性気胸は、胸腔と外界が通じてしまうので、緊張性気胸になることがあります。
緊張性気胸ってどんな状態?
壁側胸膜に孔があくと、吸気時に孔が開き、呼気時は孔が閉じるため、呼吸をするたびに胸腔内圧が上昇します。その結果、縦隔や上・下大静脈、もう片方の肺を圧迫し、静脈還流の阻害とさらなる呼吸障害が起こります。この状態が緊張性気胸です。
気胸のおもな症状は?
気胸の症状としては、突然起こる胸痛、乾性咳嗽(がいそう)、呼吸困難が3大症状です。
臓側胸膜には痛覚があるため、肺が縮むと臓側胸膜が折りたたまれて痛みを感じ、それが刺激になって乾性咳嗽が出現します。肺がしぼむので、急速に換気とガス交換が障害され、呼吸困難になります。
重度の肺疾患に続発して起こった続発性自然気胸や、緊張性気胸では、著しい呼吸困難、喘鳴、チアノーゼなどが出現します。
気胸の検査所見は?
気胸を起こしている方の胸郭運動の低下や、呼吸音の減弱あるいは消失が認められます。胸部X線写真では、肺胞内の空気や肺の虚脱が認められます(図3)。また、中等度以上の気胸では、鎖骨上窩や胸骨を打診すると鼓音がします。
気胸にはどんな治療を行うの?
気胸が軽度の場合は、安静にして経過を観察し、肺が自然に膨らむのを待ちます。気胸が中度〜重度(memo2)の場合や緊急の場合などは、穿刺脱気や持続脱気を行います。その他、手術や胸膜癒着術を行うこともあります。
memo2気胸の重症度
0度 | 虚脱のないもの |
---|---|
Ⅰ度(軽度) | 肺尖部が鎖骨の上にある |
Ⅱ度(中等度) | 肺尖部が鎖骨下にあり、肺容積が一側全体の50%以上 |
Ⅲ度(重度) | 肺容積が一側全体の50%以下の虚脱 |
穿刺脱気や持続脱気ってどうするの?
穿刺脱気は、前胸部の鎖骨中線上またはやや外側よりの第2〜4肋間から、太い注射器の注射針を胸腔内に挿入し、空気を排出させます。胸腔内圧が高くなっているため、注射針を挿入すると自然に注射器に空気が押し出されます。1日に1回、1回につき500〜800mLを脱気し、それを3回ほど行うのが一般的です。
持続脱気とは、胸腔ドレナージのことです(図4)。肋間からドレーンを挿入し、持続吸引装置に接続します。吸引圧は−5〜−10cmH2Oに設定します。排気がなくなれば治療は終了です。
気胸の手術や胸膜癒着術ってどのように行うの?
気胸の手術では、空気が漏れている部位を切除したり、嚢胞を縫縮したりします。胸腔鏡で行われること多いですが、胸腔鏡手術が困難な場合や巨大ブラなどの場合は、開胸手術が行われます。自然気胸の再発率は、穿刺脱気や持続脱気では20〜30%ですが、手術を行うと1〜2%と著しく低くなります。
胸膜癒着術は、カテーテルを介して塩酸テトラサイクリンなどの薬剤を胸腔に注入し、人工的に炎症を起こして臓側胸膜と壁側胸膜を癒着させる治療法です。施術後2〜3日は発熱や胸痛が出現しますが、1〜2週間で炎症は治まります。
気胸の看護のポイントは?
気胸の急性期は換気障害のために呼吸困難が出現しています。安楽に呼吸ができるように、体位を工夫しましょう。
持続吸引を行っている場合は、ドレーン管理が大切です。①ドレーンは確実に固定されているか、②吸引圧は適切か、③空気漏れはないか、④ドレーン挿入による痛みの有無や程度はどうか、などを観察しましょう。また、安静やドレーン挿入によって体動が制限されるため、患者の状態に合わせて日常生活援助を行います。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版