前立腺肥大症に関するQ&A

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。
今回は「前立腺肥大症」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

前立腺肥大症ってどんな病気?

前立腺肥大症とは、前立腺の内腺が肥大し、膀胱と尿道が刺激・圧迫され、排尿障害が生じる状態です。排尿障害を生じる原因疾患のなかで、最も頻度が高いのが前立腺肥大症です(図1)。なお、前立腺癌は前立腺の外腺が癌化します。

 

前立腺は加齢とともに増殖性変化をきたし、外腺は縮小し始め、内腺は逆に肥大し始めます。そのため、前立腺肥大症は50歳を越えると急増します。

 

図1前立腺肥大症の症状

前立腺肥大症の症状

 

memo1前立腺の働き

前立腺液の分泌がおもな働き。前立腺液は精液の10 〜30%を占め、精子の運動を活発にする。

 

前立腺肥大症って何が原因なの?

前立腺肥大症の原因は、加齢に伴って内腺が肥大することです。これには、男性ホルモン(アンドロゲン)とその代謝産物が関与しているようです。精巣から分泌される精巣ホルモンテストステロン)と、これと同じような作用をする副腎などから分泌されるホルモンが男性ホルモンです。

 

前立腺肥大症ではどんな症状が出現するの?

前立腺肥大症の臨床経過は、第1期(膀胱刺激期)、第2期(残尿発生期)、第3期(慢性尿閉期)の3期に分けられ、出現する症状も異なります。また、治療も病期に応じて行われます。

 

前立腺肥大症の第1期(膀胱刺激期)の症状は?

前立腺肥大症の第1期は、前立腺の肥大により、後部尿道が刺激される時期です。そのため、尿道の不快感、圧迫感、遷延(せんえん)性排尿、苒延(ぜんえん)性排尿(memo2)が見られるようになります。残尿感はあまりありません。

 

memo2遷延性排尿と苒延性排尿

遷延性排尿とは、尿が出始めるまでに時間がかかること。苒延性排尿とは、尿の出始めから終了までに時間がかかること。

 

前立腺肥大症の第2期(残尿発生期)の症状は?

前立腺肥大症の第2期においては、膀胱の力だけではすべてを排出できなくなり、50〜150mLの残尿が見られるようになります。長時間座位をとっていたり、飲酒時に前立腺に充血が加わったりすると、急性尿閉(memo3)が起こることがあります。

 

memo3急性尿閉

突然、尿を排出できなくなること。

 

前立腺肥大症の第3期(慢性尿閉期)の症状は?

前立腺肥大症の第3期においては、怒責を加えても排尿できず、完全に尿閉となります。そのため、膀胱は過伸展の状態になり、不随意に尿が少量ずつ漏れるようになります。これを溢流(いつりゅう)性尿失禁といいます。また、膀胱内圧が常に上昇するために、両側水腎症などが起こり、腎機能が低下します。

 

前立腺肥大症の検査ではどんなことが実施されるの?

前立腺肥大症の検査では、問診直腸診、残尿測定、尿流量測定、超音波断層検査、血液検査などが行われます。

 

前立腺肥大症の問診では何を聞くの?

おもに排尿状態について聞きます。そのときに、国際前立腺症状スコアやQOLスコアが用いられます(表1)。排尿状態のほか、既往歴や現在服用している薬物も聞きます。薬物のなかには、頻尿排尿困難を起こしやすいものもあるからです。

 

表1国際前立腺症状スコアとQOL スコア

国際前立腺症状スコアとQOL スコア

 

国際前立腺症状スコアとQOL スコア

 

前立腺肥大症における直腸診では何を見るの?

直腸に示指を挿入し、直腸壁を介して前立腺に触れ、前立腺の大きさ、形状、硬さを調べます。

 

正常では、前立腺はクルミ大で、柔らかく弾力性があります。前立腺肥大があると、硬く腫大しています。表面がデコボコして結節を触れたり、辺縁が不整であったりすると、前立腺がんが疑われます。

 

残尿測定と尿流量測定ってどのようにするの?

残尿の量は、膀胱に十分に尿が溜まり、尿意をもよおしたときに排尿してもらい、その直後に導尿あるいは超音波検査を行って調べます。残尿測定は、膀胱排出能を評価することが目的です。

 

尿流量は、ウロフロメータという測定機器を用いて、普通に排尿してもらうと測定できます。単位時間当たりの尿流量をグラフに表したものを尿流量線といいます。正常であれば、尿流量線は釣鐘状になります(図2)。

 

図2前立腺肥大症の尿流量線

前立腺肥大症の尿流量線

 

超音波断層検査や血液検査では何を見るの?

超音波検査では、前立腺の大きさや周囲臓器との関係を見ます。また、癌の鑑別もします。前立腺は体内の深部に位置するため、経腹的超音波断層法よりも経腸的超音波断層法が適しています。

 

血液検査では、腎機能を調べるために、血清尿素窒素、血清クレアチニン、血清電解質を測定します。また、前立腺がんとの鑑別のために、腫瘍マーカーである前立腺特異抗原PSAを測定します。

 

前立腺肥大症にはどんな治療が行われるの?

前立腺肥大症の治療には、薬物療法と手術療法があります。いずれも排尿障害の改善を目的に、病期に応じて実施されます。高齢患者が多いことや良性疾患であることから、できるだけ侵襲の少ない治療法が選択されます。

 

前立腺肥大症の第1期は、α1受容体遮断薬〔タムスロシン(ハルナール®)〕や抗アンドロゲン薬〔クロルマジノン(プロスタール®)〕を使用する薬物療法が選択されます。α1受容体遮断薬は、前立腺組織に多く分布するα1受容体に作用し、尿道抵抗を低下させます。抗アンドロゲン薬は、肥大した前立腺を縮小させる働きがあります。

 

前立腺肥大症の第2期と第3期は、手術療法の適応となります。

 

手術療法には、開腹して腺腫を摘出する前立腺被膜下摘除術と、尿道から内視鏡を挿入して腺腫を切除する経尿道的前立腺切除術TUR-P、レーザーによる前立腺出術HoLEPなどがあります(図3)。前立腺被膜下摘除術は侵襲が大きいため、腺腫が大きな場合に選択されます。

 

また、残尿に対しては、膀胱内にカテーテルを留置して排出させます。

 

図3経尿道的前立腺切除術(TUR-P)

経尿道的前立腺切除術(TUR-P)

 

前立腺肥大症の看護のポイントは?

薬物療法を受けている患者に対しては、排尿状態(排尿の回数、排尿の量、残尿感の有無など)を把握し、症状が悪化していないか、薬物の効果はあるかを観察します。

 

手術を受ける患者に対しては、術前は、手術に関する説明を十分に行い、患者の不安を軽減します。

 

術後は、膀胱内にカテーテルが留置されます。そのため、尿量、性状、血尿の有無・程度を観察し、尿路感染症に注意します。また、カテーテルの屈曲、閉塞、破損がないかどうかのチェックも必要です。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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