悪性リンパ腫に関するQ&A

 

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は「悪性リンパ腫」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

悪性リンパ腫ってどんな病気?

悪性リンパ腫とは、リンパ系の組織から発生する悪性腫瘍の総称で、血液中やリンパ節、胃腸管などに分布しているリンパ球が腫瘍化して増殖した状態です。

 

悪性リンパ腫は、大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分かれます。欧米では両者の割合はほぼ半々ですが、日本では、非ホジキンリンパ腫が約90%を占めています。

 

ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫はどう違うの?

ホジキンリンパ腫は頸部や縦隔のリンパ節に原発し、その後、隣接するリンパ節に連続的に進展します。ホジキンリンパ腫の臨床病期の判定には、アン・アーバー分類が使用され、病期によって治療法が決められます(表1)。

 

表1ホジキンリンパ腫の病期分類(アン・アーバー分類)

ホジキンリンパ腫の病期分類(アン・アーバー分類)

 

非ホジキンリンパ腫は、リンパ節だけではなく、全身のあらゆる臓器に発生します。非ホジキンリンパ腫は、全身転移度をアン・アーバー分類で、悪性度をLSG分類で判断し、治療法が決められます(表2)。

 

表2非ホジキンリンパ腫のLSG分類

非ホジキンリンパ腫のLSG分類

 

悪性リンパ腫って何が原因なの?

ホジキンリンパ腫にはEBウィルス(エプシュタイン-バールウイルス)の感染が関与しています。EBウイルスはヘルペスウイルスの仲間に属し、世界中で見られるウイルスで、咽頭部の細胞および免疫系のB細胞、NK細胞で増殖します。

 

メモ1EBウイルス

小児がエプシュタイン-バールウイルスに感染した場合、伝染性単核症やバーキットリンパ腫を引き起こす。成人の上咽頭(鼻咽頭)に好発するリンパ上皮腫の原因にもなる。エイズ骨髄移植後に生じる日和見リンパ腫やホジキンリンパ腫、癌の一部もEBウイルスが原因となっている。

 

悪性リンパ腫ってどんな症状が出現するの?

ホジキンリンパ腫は、頸部、腋窩、鼠径(そけい)部などにリンパ節腫脹が認められます。痛みは伴わないことが多いです。

 

非ホジキンリンパ腫はリンパ節以外に発症することも多く、初期から臓器浸潤(しんじゅん)が起こります。胃・腸へ浸潤した場合は、腹痛、悪心・嘔吐下痢などの消化器症状、肝臓の場合は黄疸や全身倦怠感が出現します。また、中枢神経の場合は、頭痛めまい、嘔吐、意識障害など、皮膚の場合は、湿疹、紅斑(こうはん)を伴う膨疹(ぼうしん)などが出現します。

 

悪性リンパ腫の診断にはどんな検査が実施されるの?

腫大しているリンパ節生検による、病理組織検査、染色体検査などから、悪性リンパ腫の診断およびタイプが判明します。

 

また、骨髄検査や画像検査(胸部X線検査、CT検査、MRI検査)、血液検査(乳酸脱水素酵素LDH、C反応性タンパク質CRPなど)を行い、病期や侵潤度、あるいは治療効果を見ます。

 

ホジキンリンパ腫にはどんな治療が行われるの?

ホジキンリンパ腫には、病期や臨床的悪性度により、化学療法と放射線治療を単独あるいは併用して実施されます。アン・アーバー分類のⅠ期とⅡ期では、放射線治療によって約80%の治癒が可能です。寛解導入療法の標準的な化学療法は多剤併用療法(ABVD療法)で、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンプラスチン、ダカルバジンが使用されます。

 

非ホジキンリンパ腫にはどんな治療が行われるの?

非ホジキンリンパ腫には、低悪性度(LSG分類)の初期の段階では、放射線治療が一般的です。

 

それ以外は、化学療法が中心になります。標準的な治療法はR-CHOP療法(リツキシマブ、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)です。

 

中〜高悪性度のⅠ期では、寛解導入療法として、CHOP療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)が行われ、腫瘤には放射線治療が併用されます。Ⅱ〜Ⅳ期では、R-CHOP療法が行われます。

 

標準的な化学療法で治癒する可能性が低い場合は、メソトレキサートなどの抗がん薬が使用されたり、造血幹細胞移植が行われることがあります。

 

メモ2悪性リンパ腫の化学療法

2〜3週間を1コースとして、6〜8コースを行う(4か月から半年間)。外来での治療が可能である。

 

悪性リンパ腫の看護のポイントは?

悪性リンパ腫にかかると免疫力が低下し、易感染状態ですから、看護のポイントとしては患者が感染予防行動をとれるように指導します。同時に、医療者自身も手洗いを徹底するなど、感染には十分に注意しましょう。

 

化学療法は、脱毛、吐気・嘔吐などの副作用を伴います。放射線療法も、皮膚炎などが生じます。このような副作用は予測できることです。事前に患者に伝え、副作用対策をとりましょう。

 

COLUMN「感染予防」

感染とは、病原微生物が体内に侵入した状態のことである。体内に侵入した病原微生物が増殖し、局所の炎症や全身の発熱などの症状が見られる。

 

患者は免疫能が低下しているため、感染しやすい状態(易感染状態)にある。また、すでに感染している患者もいる。

 

したがって、患者と医療従事者自身を感染から守るために感染予防策を理解しておくことが必要である。 感染の予防には、病原微生物の死滅・除去、感染経路の遮断、宿主の免疫能を高めるという3つの働きかけが必要である。

 

感染予防には標準予防策(スタンダードプリコーション)が行われる(表3)。

 

表3感染経路別の予防策(標準予防策に追加)

感染経路別の予防策(標準予防策に追加)

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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