重症筋無力症に関するQ&A

『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は「重症筋無力症」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

〈目次〉

 

重症筋無力症ってどんな病気?

重症筋無力症は、全身の筋の脱力、易疲労が生じる自己免疫疾患です。有病率は人口10万人あたり5人で、女性に多く見られます。かつては治療が困難でしたが、最近では治療法が確立され、軽快や寛解を得られることが多くなってきました。

 

重症筋無力症って何が原因なの?

筋肉は、末梢神経終末から分泌されるアセチルコリンという神経伝達物質を受け取ると収縮します。重症筋無力症は、筋肉にあるアセチルコリン受容体に対する自己抗体が産生され、アセチルコリンを受け取ることができなくなる自己免疫疾患です。そのため、刺激伝達が阻害され、筋肉が収縮しないのです。

 

重症筋無力症ってどんな症状が出現するの?

重症筋無力症の症状には、目の周囲のみに症状が現れる眼球型と、全身に症状が及ぶ全身型があります。

 

眼球型では、眼瞼下垂、斜視、複視、外眼筋麻痺などが現れます。全身型では、疲労感、嗄声、咀嚼障害、嚥下障害なども出現します。

 

これらの症状は、動作を続けて行うと悪化し、しばらく休むと回復します。また、症状は夕方に現れやすく、日によって変化するという特徴もあります。

 

重症筋無力症ってどんな検査で診断するの?

重症筋無力症の診断には、誘発筋電図、抗アセチルコリン受容体抗体の検査、テンシロン試験などの検査を実施します。

 

誘発筋電図において、何回も刺激すると反応が弱くなるという現象が見られたり、血清中に抗アセチルコリン受容体抗体が認められると、重症筋無力症と診断されます。抗コリンエステラーゼ薬であ るテンシロンを静脈注射し、抗コリンエステラーゼ薬の有効性を見るテンシロン試験が陽性になった場合も、診断の根拠になります。アセチルコリンは、コリンエステラーゼによって分解されるため、抗コリンエステラーゼ薬を投与するとアセチルコリンの分解が抑制され、症状が改善するのです。

 

重症筋無力症にはどんな治療が行われるの?

重症筋無力症の治療は、胸腺腫がある場合、胸腺摘出術と薬物治療が中心になります。

 

胸腺は自己抗体が産生される場であり、胸腺を切除することで自己抗体の産生を抑制します。

 

薬物治療には、抗コリンエステラーゼ薬や、副腎皮質ステロイド薬を中心とした免疫抑制薬が用いられます。最近では、タクロリムス、シクロスポリンなどの免疫抑制薬も用いられています。抗コリンエステラーゼ薬は、軽症の患者に対し、症状の改善を図ることを目的に処方されます。免疫抑制薬は、おもに中等症から重症の患者に投与されます。

 

重症筋無力症の看護のポイントは?

重症筋無力症は、筋力低下によりセルフケアが不足しますので、生活指導が必要です。指導内容は、転倒などの事故を起こさないように環境を整えること、症状が強く現れやすい夕方は休憩をとりながら行動することなどです。

 

また、筋無力症クリーゼの誘因になるウイルス感染やストレスに注意するよう指導し、筋無力症クリーゼ(memo)の前駆症状があれば、ただちに救急車を呼ぶよう説明しておきます。

 

薬物治療は長期に及び、副作用も出現することがあります。薬物を決められたとおり服用することの重要性と、副作用についても説明しておきましょう。

 

memo筋無力症クリーゼ

重症筋無力症の経過中に、感染、ストレス、過労、月経などが誘因となって、急激に筋力が低下し、呼吸困難を起こして人工呼吸器による管理が必要になることがある。この状態を筋無力症クリーゼという。息苦しい、唾液が多くなる、首が重くなる、などが筋無力症クリーゼの前駆症状である。前駆症状が出現していないかどうか、注意が必要である。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』 (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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