ユウコウ(有鉤)とムコウ(無鉤)|いまさら聞けない!ナースの常識【6】

毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?

知ってるつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。

そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。 

 


 

Vol.6 ユウコウとムコウ

医療機関に勤務していれば、セッシや鉗子を使う機会もある。しかし、学生のころにはそれほど勉強する機会もなく、特に新人さんなどは違いが分かりにくいのではないだろうか。今回は、ほんの小さな形状の違いが大変なことになることもある、ユウコウとムコウのお話。

 

コウとはカギ状の爪のこと

患者さんの処置や手術で使う多くの器械には、鉤が有るものと無いものがある。鉤が有るものを有鉤(ユウコウ)、鉤が無いものを無鉤(ムコウ)と呼ぶ。

病棟や外来で見かけることが多いものは、セッシと鉗子。セッシの場合は有鉤セッシ・無鉤セッシと呼ぶが、一般的には鉗子の場合はコッヘル(有鉤)とペアン(無鉤)と呼び名が変わる。

大抵は同じ大きさや形で鉤の有・無がセットになっていることが多いが、眼科などは使い分ける眼の部分によって器械の名前すら違う場合もある上、先が非常に繊細なため肉眼では分かりにくいこともある。あぁ、ややこしい。

 

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | いまさら聞けない!ナースの常識【6】ユウコウとムコウ

図1 有鉤セッシとペアンの先

 

 

有鉤・無鉤の使い分け

器械に有鉤と無鉤があるのは、臓器や部位によって使い分ける必要があるからだ。

 

基本的には

・有鉤:皮膚や真皮、筋膜などの固い組織を掴む

・無鉤:腸管や腹膜など柔らかい組織を掴む

 

特殊な場合を除けば、大まかにはこんな感じだ。例えば手術中なら、開腹後(腹膜切開後に腹腔内が見える状態)には基本的に有鉤の器械は使わない。また皮膚縫合の場合は基本的に有鉤を使う。分かりやすくいえば「鉤付きで掴んで穴が空く(素材や組織を損傷する)と困る部位は無鉤、しっかり掴む部位は有鉤」だ。

 

例えば切除の器械セットの中には、有鉤と無鉤が10本単位で入っている。大抵は間違えないように工夫をするが、並べると同じ形に見えるので、慌てたりすると間違えることもまぁ有る。間違えてユウコウで腸管を挟むと腸管損傷を起こしたり、ドレープ類をユウコウで挟むと穴が空き不潔になる。違いはほんの小さな「鉤」なのだが、間違えてしまうと大変なことになる。

 

 

ワタシがOPE室配属1週間目、初めて一人で胃切除の手術の直接介助についた時のこと。術野から戻ってきた器械の整理が追い付かずにコッヘルとペアンが混ざっており、開腹中にコッヘルを出して、Drに「ちっがーう!!」と投げつけられた。・・・そこは腸管でしたね、すいません。そのまま使っていたら間違いなく腸管を損傷した。使う前に気付いてくれて良かった!

 

外来や病棟では、チューブ類をコッヘルで挟んでで穴をあけたという話も聞く。有鉤・無鉤は器械全体のサイズから見るととても小さい部分だが、非常に重要な部分なので、使い分けには要注意だ。

 

【岡部 美由紀】

 

 

<参考資料>

経済産業省 特許庁 「手術用具」

基本臨床手技 連載 第9回皮膚縫合

・オペナーシング2008年春季増刊 手術室の器械・器具 伝えたい! 先輩ナースのチエとワザ  メディカ出版 2008年03月発行

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