最終更新日 2023/10/31

ペースメーカー

ペースメーカーとは・・・

ペースメーカー(ぺーすめーかー、pacemaker)は、何らかの原因により、心臓脈拍が低下した際、心臓に刺激を与え、脈拍が一定数以下にならないようにする医療機器である。このペースメーカーで心臓に人工的な電気刺激を与えることをペーシングと呼ぶ。

 

【使用方法】
ペースメーカーには大きく分けると永久心臓ペーシング(permanent pacing)と一時的心臓ペーシング(temporary pacing)の2種類がある。

 

(1)永久心臓ペーシング
永久心臓ペーシングは、植込み型心臓ペーシングとも呼ばれる。永久心臓ペーシングは皮下に留置し、長期間の利用が可能となる。主に心房と心室をペーシングする。

 

(2)一時的心臓ペーシング
一時的心臓ペーシングは体外式心臓ペーシングとも呼ばれる。一時的心臓ペーシングには、静脈から穿刺して直接心筋に電極を留置する経静脈ペーシングと、電極を胸部に貼付する経皮ペーシングとがある。経皮ペーシングの方がより迅速に導入できるが、ペーシングが不安定なことが多く、使用は経静脈ペーシングまでのつなぎ程度に限られる。主に心室をペーシングする。

 

(3)ペースメーカーのモードについて
ペースメーカーの設定は、原因となる疾患により問題となる部位が異なるため、刺激する部位(ペーシング部位)、心臓の自己心拍を感知する部位(センシング部位)、作動様式の3つを設定する必要があり、「ペーシングモード」と呼ぶ。
 

・1文字目:ペースメーカーが電気刺激を与える部位(ペーシング部位)
A:心房
V:心室
D:心房と心室の両方

 

・2文字目:心臓の自己心拍を感知する部位(センシング部位)
A:心房
V:心室
D:心房と心室の両方
O:感知機能なし

 

・3文字目:自己心拍を感知した時のペースメーカーの反応(作動様式)
I:自己心拍を感知したら刺激を抑制する
T:自己心拍を感知したら同期して刺激する
D:一定時間自己心拍を感知しない場合に自動的に刺激を行う
O:感知機能なし

 

・注意点
ペーシングには心房ペーシングと心室ペーシングがあるが、心房ペーシングの方が心房収縮を利用できるため、より多くの一回拍出量が期待できる。そのため心房→心室の伝導がある程度保たれている場合、心室ペーシングで無理にペーシングレートを上げてもむしろ循環に悪影響を与えてしまう可能性があるため注意が必要である。

 

【適応】
徐脈性不整脈(洞不全症候群、II~III度の房室ブロック、徐脈性心房細動など)がペースメーカーの適応となる。
また、失神や痙攣、労作時息切れ、倦怠感などの症状がある場合は、適応となる場合が多い。

 

(1)永久心臓ペーシング
永久心臓ペーシングは、一般的には洞結節の機能障害とそれに続く房室ブロックが良い適応となる。患者に心室機能障害が残存しており、頻繁なペーシングが必要な場合は心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy;CRT)や植え込み型除細動器を検討する必要がある。

 

(2)一時的心臓ペーシング
一時的心臓ペーシングは、回復の可能性のある薬剤や心筋炎などによる症候性徐脈に対し、できるだけ早く治療を開始することを目的に導入されることが多い。素早く対応できること、永久心臓ペーシングの留置が感染症治療中などの理由でためらわれる状況でも導入可能といった特長がある。

 

禁忌
ペースメーカーを使用している患者では、医療行為や日常生活などでの禁忌事項がある。

 

(1)医療行為での禁忌事項
・MRI検査(MRIに対応していないペースメーカーを使用している患者の場合)
放射線治療におけるγ線のペースメーカー本体への直接照射
など

 

(2)日常生活での禁忌事項
・体内に電気を通す機械の使用(電気風呂、EMS、体脂肪計、低周波治療器、高周波治療器、医療用電気治療器)
・漏電した家電の使用(家電を使用するときは、必ずアースを使うよう指導する)
・金属探知機
・全自動麻雀卓
など

 

【引用・参考文献】
1)2021 ESC Guidelines on cardiac pacing and cardiac resynchronization therapy.ESC Clinical Practice Guidelines.European Society of Cardiology.

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