最終更新日 2023/10/26

イレウス

イレウスとは・・・

イレウス(いれうす、ileus)とは、腸管運動の障害により、腸内容物の運搬がうまくいかない状態である。

 

【定義】
従来、日本ではイレウスを、①腸閉塞による「機械性イレウス」と、②腸管麻痺による「機能性イレウス」に分け、これらを合わせて「イレウス」と総称していた。


しかし、海外においては、「イレウス」は従来の②機能性イレウスのみを指し、①機械性イレウスは「腸閉塞」と呼ばれている。


そのため、近年日本でも海外に準じた定義に変更された。本項目でも、従来の②機能性イレウスに該当する新定義の範囲で解説する。


また、機能性イレウスは、腸管の蠕動運動の低下による「麻痺性イレウス」と、腸管の蠕動運動の不規則な亢進による「痙攣性イレウス」に分類される。

 

【原因】
機能性イレウスには、主に以下のような原因が挙げられる。
・腹部手術後
腹腔内や後腹膜の炎症(汎発性腹膜炎虫垂炎など)
・腹腔内や後腹膜の血腫(腹部大動脈瘤破裂、鈍的腹部外傷など)
・腸管の血流障害(上腸間膜動脈閉塞症など)
代謝性疾患(低カリウム血症、低マグネシウム血症など)
・薬剤性(オピオイド、抗コリン薬など)

 

【症状】
通過障害により腸管内圧が上昇することで、嘔気・嘔吐や腹部膨満、便秘といった症状を生じる。腹痛がみられることもあるが、腸閉塞と比較すると程度は軽いことが多い。

 

【検査】
問診では、排便状況や便の形状、これまでの手術歴や消化器疾患の既往を確認する。


診察や画像検査(腹部超音波検査、CT)にて、腸蠕動の減弱と閉塞起点のない腸管拡張を確認すると、イレウスが疑われる。また、重症例では脱水電解質異常が生じる可能性があるため、血液検査や超音波検査で脱水所見を確認することもある。

 

【診断】
病歴や基礎疾患、上記検査から総合的に診断する。

 

【治療法】
イレウスの原因となる疾患の治療とともに、絶飲食を行い、腸管安静を図る。また、消化管の減圧のために、経胃管やイレウス管を用いて腸管内容物を持続的に吸引しつつ、経過を観察する。脱水や電解質異常が生じる場合は、輸液療法も行う。

 

 

【引用・参考文献】
1)急性腹症診療ガイドライン出版委員会ほか編.急性腹症診療ガイドライン2015.2015,医学書院,p188.
2)J.E. Tintinalli,Tintinalli's Emergency Medicine,9th ed.- A Comprehensive Study Guide.2020,MCGRAW-HILL EDUCATION,p2114.

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