最終更新日 2018/10/25

不規則抗体

不規則抗体とは・・・

不規則抗体(ふきそくこうたい、irregular antibody)とは、赤血球抗原に対する抗体のうち、規則性抗体(抗Aおよび抗B抗体)以外の抗体の総称である。

【ABO式血液型における抗体】
血液型の項参照

【不規則抗体の種類】
赤血球表面の抗原にはA抗原、B抗原以外にも多数の抗原が確認されており、それらの抗原に対する抗体を不規則抗体という。不規則抗体にはRh系、Kell系、Duffy系、Kidd系、MNSs系、Lewis系、P系、Diego系、Xg系、Bg系、Jra系などが存在する。これらの不規則抗体は先天的(生まれつき)に持っているものと、輸血、妊娠移植を機に産生されるものがある。

【測定方法】
不規則抗体の測定方法には生理食塩液法(生食法)、酵素法、アルブミン法、間接抗グロブリン試験がある。通常、スクリーニング検査には、生食法と間接抗グロブリン試験を用いる(日本輸血・細胞治療学会『輸血のための検査マニュアル Ver.1.3.1』)。

【抗体と輸血の関係】
例えばA型の患者(赤血球にA抗原を持ち、血漿中に抗B抗体を持つ)において、B型の赤血球輸血を行うと、輸血で入ってきたB抗原を持つ赤血球に、患者が持つ抗B抗体が反応して破壊するため、溶血を起こす。溶血量が多いと、腎不全電解質異常などの合併症につながる。同様に、不規則抗体を持つ患者において、その抗体が反応する赤血球製剤を輸血すると抗原抗体反応が起こり溶血を起こす。
しかし、これらの抗原抗体反応が、不規則抗体のすべてで起こるわけではない。不規則抗体で臨床的意義のあるものはRh系、Kidd系、Duffy系、Diego系、Kell系,MNSs系の一部である。例えばRh系はD、C、c、E、eの5種類の抗原が存在するが、D抗原の抗原性が強く、抗D抗体ができると溶血を起こす。そのため、輸血の際はABO血液型と同時にRh血液型が確認され、通常D抗原陰性をRh陰性としている。そして、受血者と供血者間の血液型不適合を防止するために「交差適合試験」を行う。

執筆: 浅香葉子

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター副医長

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