最終更新日 2018/05/11

蕁麻疹

蕁麻疹とは・・・

蕁麻疹(じんましん)は、掻痒を伴う一過性、限局性の紅斑や膨疹である。症状としては、突然境界明瞭な円形あるいは地図状のわずかに隆起した丘疹で発赤を生じ、激しい掻痒を伴う。膨疹は真皮上層の浮腫が本態で、全身どこにでも発生するが、摩擦あるいは圧迫されやすい部位に生じる傾向にある。ときに皮膚だけではなく粘膜にも生じ、咽頭部に生じた場合は嗄声や呼吸困難を来す。膨疹は、通常数十分以内に収まり、長くても24時間以内に消退する。

発症メカニズムは、肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質(chemical mediator)が放出され、これが血管透過性を亢進させることで真皮上層に浮腫が生じる。約90%において原因が特定できない。

診断は臨床症状から行う。問診の際は、機械刺激や寒冷などが原因か聴取し、食物や薬剤の服用についても確認を行う。膠原病などの全身疾患に合併して出現することもあるため原疾患の検索や問診も必要である。
検査として、紅色皮膚描記症、血清IgE試験、IgE RAST、皮内反応、内服誘発試験などがある。治療は抗原もしくはほかの誘因を除去し、抗ヒスタミン薬を内服する。重症例にはステロイド薬も使用する。 

蕁麻疹の分類は明確にはされていないが、経過から急性・慢性に分類され、そして原因や病態によっても分類される。
1.急性蕁麻疹:発症してからの期間が1か月以内のもの。特に小児では、上気道などの一過性の感染に伴うものが多い。また原因は特定されなくても、適切な治療のもとに治癒に至る例が多い。
2.慢性蕁麻疹:発症してからの期間が1か月以上経過したもの。夕方から夜間にかけて症状が出現、悪化するものが多く、自己抗体が検出されることがある。

3.物理性蕁麻疹:皮膚表面の機械的擦過や圧迫、寒冷、温熱、日光、振動、水との接触といった物理的な刺激が加わることによって生じるもの。30分~1時間といった短時間で消失する。
4.コリン性蕁麻疹:小児や若年の成人に多くみられ、入浴や運動、精神的緊張など発汗を伴う際に出現する。一つ一つの皮疹が1~4mmと小さい。
5.アレルギー性蕁麻疹:食べ物や薬剤、植物、昆虫など特定物質(アレルゲン)に暴露されることにより起こるもの。抗原への暴露後数分から数時間以内に生じる。特定の抗原物質に対する特異的IgEを介した即時型アレルギー反応で、アナフィラキシーショックを呈することもある。医療機関を受診する蕁麻疹症例のうち数%である。
6.接触蕁麻疹:皮膚、粘膜が特定の物質と接触し、浸透することで生じる。通常原因物質の暴露後数分から数十分以内に症状が出現し数時間以内に消退する。
7.不耐症:アスピリンなどの非ステロイド系鎮痛薬、色素、造影剤などによる蕁麻疹でIgEが関与しない
8.血管性浮腫:血管透過性亢進による蕁麻疹よりも深部の皮下組織で生じる浮腫。皮膚、粘膜の限局した範囲に出現し、眼瞼、口唇、陰部などに起こりやすい。掻痒は通常伴わない。ときに皮膚のみではなく、舌咽頭部、気管支粘膜、消化管粘膜、頭蓋内などにも浮腫を生じ、致命的となることがある。2~3日持続し、跡形なく消失する。掻痒は伴わず、まれに遺伝することがある。

執筆: 上村恵理

長崎大学病院 高度救命救急センター助教

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