最終更新日 2017/07/24

再生医療

再生医療とは・・・

再生医療(さいせいいりょう)とは、傷病で失われた臓器や組織の再建、修復、形成を目的とした治療法全般のことである。疾病の予防に応用されることもある。従来は移植(臓器、組織、細胞)を含む概念であったが、近年は分化能を有する細胞から必要な組織や臓器を作り出し、喪失した機能を回復させる方法を指す。

動物の細胞は1つの受精卵からあらゆる組織へ分化する。しかし、細胞分裂を繰り返すうちに色々な組織へ分化する能力を失い、一定の組織にだけなる性質の体細胞になる。その点に着目して、当初はあらゆる分化能を有するES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞〈※1〉)を用いた再生医療の研究が進んだ。この方法の欠点は他人の細胞から作るので免疫反応による拒絶反応が生じうることと、ヒトの受精卵を用いるので倫理的側面に課題があることだった。一方、2006年に京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞(induced pluripotent stem cell:人工多能性幹細胞〈※2〉)の開発に成功した。世界的インパクトは大きく、以後の再生医療に革命をもたらした。

※1 ES細胞…ヒトの受精卵から取り出した分化能を有する細胞
※2 iPS細胞…皮膚などの体細胞に極少数の因子を導入して多様な分化能を引き出した細胞

■幹細胞から作成した臓器の移植例
一部の組織については、移植医療への応用が試されている。2014年に、網膜再生医療研究開発プロジェクトが、iPS細胞から作成した網膜を70代の女性に移植することに成功した。移植の対象となった患者は滲出型加齢性黄斑変性症(しんしゅつがたかれいせいおうはんへんせいしょう:目の病気)である。
ただし、網膜の全てを再生したわけではなく、患者のiPS細胞から誘導した網膜色素上皮細胞(もうまくしきそじょうひさいぼう)をシート状に培養したものである。また、この手術の目的は安全性を確認することであり、まだ機能の回復を期待するまでには至っていない。

■再生医療に関する行政の動向
行政上は、厚生労働省が中心となって幹細胞を利用した新しい再生医療の実用化を推進している。具体的には、基礎研究から臨床段階まで一貫した研究開発の助成、そこから生まれる臨床研究や創薬研究に対する支援などが挙げられる。

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