最終更新日 2019/12/06

補体

補体とは・・・

補体(ほたい、complement)とは、生体に侵入した病原微生物などの抗原を排除するための免疫反応を媒介するタンパク質の総称である。「抗体の働きを補完する」という意味で、「補体」と名付けられた。補体系ともいう。

【補体の働き】
体内に侵入した病原微生物などの抗原に抗体が反応して、抗原抗体複合体という抗原と抗体が結合する複合物が形成される。しかし、それだけでは病原微生物は死滅させることはできない。そこで、補体が抗原抗体複合体と反応することで、病原微生物を破壊したり貪食細胞に貪食させたりすることができる。

しかし、その後に抗体がなくても病原微生物と補体が直接反応することがあることも判明し、補体系と呼ばれるようになる。

【補体の種類】
血清中の補体は9つの成分タンパク質からなり、それぞれC1~C9と命名されている。また、副経路の補体成分はB因子、D因子などと名付けられている。

【補体の活性化の経路】
従来の抗体と反応する経路を古典的経路、抗体を介さない経路を副経路とよぶ。また、マンノース結合レクチンによるレクチン経路も存在する。
補体の活性化の経路は、以下の3つである。

・古典的経路
抗体と反応する経路。C1が抗原抗体複合体に接触することで順次活性化し、最終的に膜傷害複合体(MAC)を形成する。これが細胞膜内に埋め込まれ、細胞膜に穴を空けて水・電解質を侵入させることで細胞溶解を起こし、病原微生物を破壊する(図1)。

・副経路
抗体を介さない経路。病原微生物の表面にB因子、D因子、C3が反応して活性化が起こる。これによってC5を活性化させ、以降の経路は古典的経路と同様である。

・レクチン経路
マンノース結合レクチン(MBL)による経路。C1の代わりに病原微生物と結合したレクチンから活性化し、C4が反応して以降の経路は古典的経路と同様である。

図1補体の活性化による細胞溶解

執筆: 井上 彰

明石医療センター 救急科医長

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