准看護師から専門看護師へ 深く学んで見えてきた「看護の奥行き」

ICUで患者のケアに当たっている急性・重症患者看護専門看護師、齋藤さんの写真

准看護師から専門看護師へ 深く学んで見えてきた「看護の奥行き」|急性・重症患者看護専門看護師

 

Profile

急性・重症患者看護専門看護師

齋藤 大輔(さいとう・だいすけ)さん

公立学校共済組合 関東中央病院 ICU・救急外来

▼2011年度、聖路加国際大学大学院 看護学研究科 博士前期課程 修了

▼2011年度~、急性・重症患者看護専門看護師

 

 

急性・重症患者看護専門看護師の齋藤大輔さんは、准看護師からキャリアをスタートし、より深い看護の学びを求めて専門看護師の道へ進みました。

 

現在、地域の二次救急を担う関東中央病院(東京)で、ICUと救急外来を主なフィールドとして活動しています。

 

 

「そうか、こういうことか」大学院での学びは臨床でより深く

「専門看護師って身近にいなくて、目指した僕もよくはわかっていなかったかも(笑)」という齋藤さんが、専門看護師になろうと大学院に進んだのは28歳のとき。

 

精神科病院や総合病院で働きながら准看護師、看護師の資格を次々に取得、大学病院に移り、ICU・CCUで急性期の臨床経験を積む一方、25歳から挑戦した大学の通信課程を卒業したころでした。

 

専門看護師を目指した思いについて語る齋藤さんの写真

「看護学をもっと深く学ばなければというコンプレックスのような思い」がモチベーションだったという齋藤さん

 

 

自身の経歴をたどるとき、一種のコンプレックスがあったと話します。

 

「学歴や資格の違いで悔しい思いをすることも、やっぱりあって。もっとしっかり看護学を学ばなくちゃ!学びたい!という気持ちが、進学や専門看護師の資格取得を目指す思いへとつながっていきました

 

大学院では、看護倫理や研究法といった基礎から呼吸生理学のような専門分野まで、系統的に学んだ齋藤さん。「怒涛のような厳しさだった」と苦笑しつつ、「『高度看護実践に必要な思考力の基礎』を身につけることができた」と振り返ります。

 

ただ、「こうして大学院で学んだことは、学ぶほどに奥が深いものばかりで、臨床に戻ってから『そうか、こういうことか』と体感することが実は多かったなと思います」と話すように、資格取得の「後」に理解が深まったことも多かったそう。

 

そこには成功だけでなく、時に苦しい“失敗”もありました。

 

 

専門看護師として苦い“失敗”を糧にして

それはたとえば、大学病院の救急外来に戻ってすぐのころ

 

大学院で学んできたことへの自負と専門性を生かしたいという意欲が空回りしてしまい、現場のチームに寄り添った実践ができず、むしろ一部の医師や看護師とは関係性が非常に悪くなって……という苦い経験を味わいました。

 

「やっぱり僕が青かったんです」と、齋藤さんは過去の自分を冷静に見つめます。

 

過去の苦い経験について率直に語る齋藤さんの写真

専門看護師としての過去の苦い経験も、「それがあったからこそ今の自分がある。出会ったすべての方に感謝です」

 

 

「いくつかのエビデンスを踏まえて、間違ったことはしていない、とは当時も今も思っています。けれども、専門看護師として本当に未熟だった、と認めるしかありません

 

それぞれの組織の文化・人に寄り添いながら“アクセル”と“ブレーキ”を使いこなし、患者さんにとって最善の結果を導く――。専門看護師の役割であるコンサルテーション(相談)コーディネーション(調整)の能力をもっと磨く必要がありました」

 

こうした臨床での経験から学びを獲得できたのは、専門看護師について理解し、率直なフィードバックをくれた上司や先輩の存在のほか、修了後も大学院で恩師や他の専門看護師たちと臨床での実践についてディスカッションするなど、継続したリフレクションの場があったことが大きかったそう。

 

「専門看護師は資格を取ってからがスタート、ですね、本当に」

 

齋藤さんが看護部長の木村さんと話している写真

これからの看護実践について、木村弘江看護部長と話し合う齋藤さん

 

 

「看護が立体的に見えてきた」、次の10年で目指すものは

急性・重症患者看護専門看護師として10年目となった齋藤さんは「看護がだんだんと奥行きを持って、立体的に見えてきた」と自身の現状を表現します。

 

「医師と対等にディスカッションできる臨床判断力、患者・家族の生活背景に適切に寄り添った看護の実践力、医師や認定看護師がそれぞれの専門性に特化できるように整える調整力、そして、こうしたスキルの基盤となる『人となり』…。

 

ほかにも、いろんな要素が絡み合って看護の奥行きを作っている、という感じでしょうか」

 

まだまだ言葉にしきれていないという「看護の奥行き」を、クリアに見極めていきたいと話す齋藤さん。

 

 

22020年春、これまでいた大学病院の文化を離れ、地域中核病院である関東中央病院に移ったのは、そのためのチャレンジです。

 

「新型コロナウイルスの感染拡大であらためて可視化されたように、日本の救急や急性期医療の現場にはシステム上の課題や歪みがあると思っています。

 

それぞれの医療機関で医療やケアを改善するというミクロの視点だけでなく、医療圏全体のヘルスケアにも目を向けて、マクロな視点で地域医療システムの改善・再構築に携わっていきたい―というのが、自分なりの奥行きを目指す次の10年かな、と考えています」

 

専門看護師としての新たな挑戦へ、これからも実践とリフレクションを続けていきます。

 

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

SNSシェア