輸血の実施方法~副作用 | 輸血【2】
【監修】
山本君子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 教授)
【執筆】
加治美幸 (杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 講師)
「輸血の実施」の目的
●血液成分の欠乏や機能不全に対してその成分を補充し、臨床症状の改善を図ることを目的とした治療を実施すること
●輸血関連急性肺障害(TRALI)や細菌感染症、遅発性溶血性副作用などの副作用が起こることがあるため、輸血終了後も継続的な観察を行う
「輸血の実施」の注意点
●血液成分を体内に入れる臓器移植の一つであり、一定のリスクを伴うため、危険性をふまえ安全かつ適正な輸血を行う必要がある
●血液製剤や患者の取り違えなどの人為的ミスは決してあってはいけない
●副作用が現れたらすぐに輸血を中止し、医師に連絡する
「輸血の実施」の必要物品
- 交差試験適合票
- 輸血用血液支給票
- 血液製剤
- 膿盆(廃棄物入れ)
- 手袋
- 輸血セット
- 輸血指示書
「輸血の実施」手順
(1)指示書の記載内容や、医師から患者さんへの説明内容を確認する
(2)看護師2人でダブルチェックを行う
(3)衛生的手洗いをし、手袋を装着する
(4)血液バッグを左右上下に静かに振って混和する
(5)血液バッグの破損・色調変化・溶血・凝固の有無を確認する
(6)輸血口を露出させる
(7)輸血セットのびん針を、回しながら輸血口にまっすぐ刺しこむ
(8)輸血口の根元まで確実に刺しこまれている事を確認する
(9)ろ過筒内を血液で十分に満たす
(10)点滴筒内を押し、血液を1/2程度満たす
(11)クレンメを開き、ルートの先端まで血液を満たす
(12)輸血を実施することを患者さんに説明する
(13)看護師2人でダブルチェックを行う
ポイント
コミュニケーション可能な患者さんの場合は、氏名と血液型を口頭で伝えてもらう
(14)脈拍などのバイタルサインを確認する
(15)針が確実に血管に入っているか確認する
(16)刺入部の腫脹・痛みの有無を確認し、輸血セットを接続する
(17)輸血セットを交換し、適切な処置を行う
■<時間別>輸血実施後の観察ポイント
- 開始5分間:患者さんのそばで、急性反応の有無を確認・記録する
- 開始15分程度経過後:5mL/分に速度をあげる
- その後 約30分間隔で:患者さんの状態を確認する
ポイント
異常がみられたら、輸血を中止して医師に連絡する。その場合は、輸血セットを交換し、生理食塩水または細胞外液類似輸液剤の点滴に切り替えるなど、適切な処置を行う
(18)輸血を実施することを患者さんに説明する
(19)終了後、患者さん氏名、血液型、製造番号を再度確認し、診療録にその製造番号を記録する
(20)輸血の実施による副作用が起こることがあるため、輸血終了後も継続的な観察を行う
■輸血の実施における代表的な副作用
- 輸血関連急性肺障害(TRALI)
- 細菌感染症
- 遅発性溶血性副作用
【出演】
市川砂織(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
田地奏恵(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 助教)
森下純子(杏林大学保健学部看護学科看護学専攻 非常勤講師)
【引用・参考文献】
(1)室井一男 他(著):看護技術がみえるvol.2臨床看護技術,メディックメディア,東京,2013:174-188.
(2)小林優子(著):系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護技術Ⅱ 基礎看護学③,医学書院,東京,2013:322-327.
(3)肥後すみ子(著):新体系 看護学全書 基礎看護学③ 基礎看護技術Ⅱ,メヂカルフレンド,東京,2014:299-307.
(4)厚生労働省:輸血療法の実施に関する指針(改訂版)(2016/01/21アクセス)
(5)厚生省薬務局:血液製剤保管マニュアル」(平成5年9月16日)(2016/01/21アクセス)
(6)日本赤十字:輸血の実施.(2016/01/21アクセス)