外用療法|皮膚科の治療①

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は外用療法について解説します。

 

五十嵐敦之
NTT東日本関東病院

 

 

Minimum Essentials

1皮膚科の治療には外用療法、全身療法、手術療法などがあるが、基本となるのは外用療法である。

2外用薬にはさまざまな剤型があり、皮膚症状に応じた基剤を選択することが大切である。

3 ステロイド外用剤ではおもに皮膚萎縮、毛細血管拡張などの局所的副作用に注意する必要がある。

4外用薬の塗布量はfinger-tip unit(FTU)を目安に指導すると、患者の理解を得られやすい。

 

外用療法とは

外用療法は皮膚疾患治療の基本である。効果を高めるために、古くからさまざまな外用療法が工夫されてきたが、最近では有効性の高い薬剤の開発により単純塗布で十分な効果をあげられるようになってきた。

 

外用療法は内服療法よりも時間や手間がかかるため、アドヒアランスの低下を招きやすいので注意が必要である。

 

外用薬の組成

外用薬は基剤、主剤、添加剤からなる。主剤を添加するための基礎となるものを基剤とよび、加えられる薬剤を主剤とよぶ。基剤の選択は、病変部の性状や主剤の性質により決められる。

 

主剤にはステロイド薬、抗ヒスタミン薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)、抗菌薬、抗真菌薬、ビタミン類、尿素などさまざまなものがある。このほか吸収を促進させたり、製剤を安定させたりする目的で種々の添加剤が加えられている。健康な皮膚からの薬剤の吸収は、脂溶性の薬物を乳剤性軟膏に添加するともっとも促進され、おもに毛包脂腺系から吸収される。

 

外用薬の剤型

外用薬には粉末剤、液剤、ローション、軟膏、泥膏、糊膏、硬膏、テープ、ゲル、スプレーなどの剤型があり、基剤として用いられるほか、単独でも使用されることがある。皮疹の部位、性状、季節、患者の好みなどに応じて剤型を選択するが、とくに皮疹の性状が重要である。表1によく用いられるおもな剤型を示す。

 

表1 外用薬のおもな剤型

外用薬のおもな剤型

 

皮膚科で用いる外用薬

ステロイド外用剤

(1)ステロイド外用剤のランク

ステロイド外用剤は効力の強さの順から、strongest、very strong、strong、medium(mild)、weakの5段階に分けられている。効力の強いものほど副作用も強く、長期にわたる外用や誤った使用法による局所的、全身的副作用の出現に注意が必要である。

 

(2)ステロイド外用剤の副作用

近年のステロイド外用剤は、吸収されると分解され活性が低下するように設計されており(アンテドラッグ)、全身的副作用を生じることは少ない。ステロイド外用剤のおもな局所的副作用を表2に示す。

 

表2 ステロイド外用剤のおもな局所的副作用

ステロイド外用剤のおもな局所的副作用

 

(3)ステロイド外用剤の使用上の注意

ステロイド外用剤の経皮吸収量は患者の年齢、外用部位、病変の性状によって異なる。

 

小児、老人では経皮吸収量が成人に比して多い。顔面皮膚は毛包脂腺が多いため経皮吸収は他の部位に比して多く、局所的副作用の出現にはとくに注意が必要である。陰囊、頭皮も吸収量が多い部位である。反面、手掌足蹠は角層が厚いため経皮吸収量が少ない。

 

また、疾患の性質に応じたランクの外用剤を選択することが大切である。

たとえば、接触皮膚炎など急性の病変では投与期間が短期間であるため、強力なものを使用しても副作用が出現する心配は少ない。

一方、乾癬アトピー性皮膚炎など長期にわたり治療が必要な疾患では、漫然と強いクラスの外用剤を使い続けるべきではない。

 
免疫調整外用薬

カルシニューリン阻害薬でTリンパ球の活性抑制作用のあるタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)が、アトピー性皮膚炎のみに適応がある。

 

0.1%の成人用と0.03%の小児用(2歳以上16歳未満)がある。ステロイド外用剤のような皮膚萎縮、毛細血管拡張などの副作用がなく、顔面、頸部にとくに高い有効性を示す。

一方、刺激感(灼熱感、ほてり感、疼痛、瘙痒感など)が高頻度に認められ、外用数十分後に一過性に生じることが多い。ほとんどは一時的で、2、3日外用を続けていくと皮疹の改善とともに消失してくる。

 

活性型ビタミンD3外用薬

ビタミンD3は表皮増殖抑制、分化誘導作用があり、乾癬をはじめとする角化異常症に用いられる。

 

ステロイド薬にみられる皮膚萎縮などの副作用がなく、寛解期間が長いなどの利点がある。過量投与による高カルシウム血症の出現には注意が必要であり、使用量の制限が設けられている。

また、皮膚刺激症状があり、ひりひりとした刺激感や紅斑、落屑がみられることがある。乾癬に対しては、本剤とステロイド外用剤の併用治療がそれぞれの単独治療より有効性が高い。

 

抗菌外用薬

抗菌薬含有軟膏は古くから用いられているが、耐性菌出現の問題、感作による接触皮膚炎の問題などがある。

 

毛包炎、伝染性膿痂疹などの表在性の細菌感染症が適応となり、また一部の外用薬はざ瘡にも使用される。汎用されているゲンタマイシン軟膏には黄色ブドウ球菌の50%が耐性であるとの報告がある。

 

NSAIDs

ステロイド外用剤に比べ抗炎症作用が弱く、接触皮膚炎を生じやすいという欠点から、近年では帯状疱疹以外にはあまり使われなくなった。

 

抗真菌外用薬

種々の構造のものがあるが、薬剤により適応症が異なる。剤型としてはクリーム剤がよく使われる。最近は白癬用の外用薬も登場した。

 

抗ウイルス外用薬

単純疱疹、帯状疱疹などに用いられる。最近では尖圭コンジローマに適応を有するイミキモドが発売された。

 

保湿薬

保湿薬にはヘパリン類似物質、尿素製剤、セラミド製剤、ワセリンなどさまざまなものがあり、それぞれに長所、短所がある。

 

尿素製剤は角質溶解作用をもつため刺激性があり、バリア機能を低下させる場合がある。ぴりぴりとした刺激感が出ることがあり、乳幼児では避けたほうが無難である。ワセリンは油膜を角質表面につくることにより水分の蒸散を抑えるが、べたつく、夜塗ると就寝中に熱がこもってかえってかゆみが強くなることもある、などの欠点がある。ヘパリン類似物質は水分と結合して保湿作用を発揮するものであるが、種類によってはにおいが気になることがある。

 

皮膚潰瘍治療薬

皮膚潰瘍治療薬には抗菌作用、壊死組織融解作用、肉芽形成促進・上皮化促進作用などさまざまな薬理作用を有するものがあり、潰瘍の病期によって使い分ける必要がある。

 

褥瘡を例にとれば、炎症期には壊死組織除去、感染制御を目的として抗菌作用を有する薬剤や蛋白分解作用を有する薬剤を選択し、肉芽増殖期、表皮形成期には肉芽や表皮の増殖促進作用をもつ外用薬を選択するのが良い。

 

また、滲出液の量を把握することも重要で、主剤の薬理作用と基剤の特性から創面の状態に合わせて選択していくが、滲出液の少ないときは乳剤性基剤を、多いときは水溶性基剤を用いるのが基本である。

 

ざ瘡治療薬

今までは抗菌外用薬しかなかったが、アダパレン、過酸化ベンゾイルが登場し、面皰(にきび)にも効果が望めるようになり、さらには合剤も使われるようになった。

 

 

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外用薬の塗り方

塗布する時期と回数

一般に入浴後もしくはシャワー浴後の外用が勧められるが、1日2回以上の外用の場合はその限りではない。実際には薬剤の種類や対象疾患により、適宜外用方法を調整するのが良いであろう。

 

具体的にはチューブから軟膏を数ミリ絞り出して指先にとり、症状のある部位の皮膚何ヵ所かに分け塊のまま置いたあと、指先を使ってできるだけ広く伸ばすようにして、ちょうど薬が伸び切った状態まで広げるようにする。すり込む必要はない。

 

外用薬の塗布量

FTU1)による塗布量がわかりやすい(図1表3)。

 

図1 軟膏の塗布量

1FTUは大人の人差し指の末節(最先端からDIP関節までの約25mm)に直径5mmのチューブから絞り出した軟膏量で、0.5g程度に相当する。この量を大人の手のひら2枚分(300cm2)の広さに塗るのが適当とされている。

 

表3 FTUによる塗布量の目安(成人)

FTUによる塗布量の目安(成人)

注:日本人ではこれよりやや少なめに塗布する。

 

これで計算すると、顔と首では乳児が1FTU、成人が2.5FTU程度、全身に塗布した場合3ヵ月の乳児で8FTU、12歳で36.5FTU程度の軟膏量が必要となる。

 

表3から計算すると、成人の場合、顔面を除いた全身に軟膏を塗るには「1×2+2×2+3×2+6×2+7+7=38unit」、つまり1回19gの軟膏が必要となる。しかし日本のチューブの口径は小さいので、この量より少ない。あくまでも目安としてこのように説明すると、患者には理解しやすいであろう。

 
保湿薬は先に塗る?あとに塗る?

アトピー性皮膚炎や皮脂欠乏性湿疹などでは、ステロイド外用剤などの炎症を抑える外用薬と保湿薬とを重ねて塗ることが多い。その際、保湿薬を先に塗るべきかあとに塗るべきかという問いに対しては、どちらのほうが良いという確固としたデータは存在しない。医師によっても指導が異なり、意見の統一をみていないのが現状である。

 

保湿薬を塗ったあとにステロイド外用剤を塗ると、皮膚への浸透率が低下するため、ステロイド外用剤の効果を十分に引き出すためには保湿薬をあとに塗るべきであるというのが保湿薬後塗り派の意見である。

逆に、ステロイド外用剤を塗ってから保湿薬を塗るとステロイド外用剤が湿疹部位以外にも広がってしまうため、患部のみにステロイド外用剤の効果を発揮させるためには保湿薬を先に塗るべきであるというのが保湿薬先塗り派の意見である。

 

先発医薬品とジェネリック医薬品

たとえばステロイド外用剤については、先発医薬品とジェネリック医薬品の基剤中に溶けているステロイド濃度は、先発医薬品のほうがジェネリック医薬品より有意に高く、皮膚透過性も優れていることが示されている2)

 

先発医薬品とジェネリック医薬品では基剤だけでなく、添加物などその他の組成も異なることが多く、皮膚透過性のみならず混合の際の安定性などにも差がある。先発医薬品とジェネリック医薬品の効果は、必ずしも同等とはいえないのが実情である。

 

 

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引用・参考文献

1)Finlay AY et al:“Fingertip unit” in dermatology.Lancet 2:155, 1989
2)大谷道輝:特集/ ジェネリック・ガイド ステロイド外用剤.MB Derma 113:71-74、2006


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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