皮膚付属器|皮膚の構造と機能②

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は皮膚付属器について解説します。

 

瀧川雅浩
浜松医科大学名誉教授

 

 

皮膚付属器の構造と機能

毛包

毛包は毛を産生する管状の組織であり、上皮性細胞などから構成されている。毛根には毛母(もうぼ)細胞が集合しており、毛母細胞がケラチンをつくり、これが集合してかたくなり毛になる(図1左)。毛が伸びるとき、毛母細胞は多くの栄養を必要とするため、毛根周囲には血管が発達している。

 

図1 皮膚の構造

皮膚の構造

 

毛包には脂腺が付属しており、脂腺でできた皮脂(ひし)は毛包内を通って皮膚表面に排出される。また、起毛筋という筋肉もついており、鳥肌が立つのは、この筋肉が収縮して毛穴が目立つためである。

 

毛髪

毛髪は手のひら、足の裏、唇など体表の一部を除き全身に生えている。部位により長さや太さが違い、硬毛と軟毛に分けられる。硬毛は頭髪、腋毛、陰毛、まゆ毛などで、生えているのがはっきりわかる毛である。これに対し軟毛は腕や背中に生えている、よく見ないとわからない毛である。

 

ヒトの頭髪の本数は一般的に約10万本である。毛髪の伸びる速度は部位により違うが、日本人男子では頭部で1日に約0.4mmである。

毛髪は、直毛(ストレートヘア)、波状毛(ウェーブヘア)、綿毛(カーリーヘア)に分けられる。その色調も黒色、褐色、金色、赤色とさまざまであり、メラニン色素の量により決まる。白髪はメラニン産生が停止するために起きる老化現象の1つである。

 

新生児の毛髪はすべてうぶ毛であるが、満2歳頃までには生えかわり軟毛になる。さらに学童期を過ぎると硬毛が生えてくる。思春期を過ぎる頃から硬毛から軟毛へ、軟毛からうぶ毛へと逆のコースをたどる。50歳を過ぎた頃からは抜け毛も増え、進行すると老人性脱毛となる。

 

健常な毛髪表面は、規則正しいうろこ状のキューティクルで覆われている。しかし、パーマなどに用いる薬液処理などで傷んだ毛髪では、キューティクルが脱落し、枝毛や切れ毛になりやすい。

 

ヘアサイクル(毛周期)

ヒトでは1本1本の毛髪に独立した寿命があり、伸びては抜け、また新しく生えるというサイクルを繰り返している。これをヘアサイクル(毛周期)という(図2)。

 

図2 ヘアサイクル

ヘアサイクル

 

毛髪が伸びる時期を成長期といい、4~7年続く。毛髪全体の80~90%が成長期の状態である。

 

成長期が終わると、毛包が縮んで毛髪全体が上に押し上げられる。これを退行期といい、2~3週間続く。

 

最後に押し上げられた髪の毛は数ヵ月かけてゆっくり抜けてゆく。この時期を休止期といい、毛髪全体の10~15%がこの状態である。したがって1本の毛髪の寿命は5~8年である。

 

ここでいったん毛髪の生産は止まり、半年ぐらいすると新しい成長期の毛髪が再生してくる。洗髪したとき抜ける頭髪は健常者では50~80本で、休止期の毛髪である。

 

脂腺

皮膚表面の脂(あぶら)を皮脂といい、毛包に付属している脂腺でつくられ、分泌部を通って皮膚の表面に排出される。顔面、頭、胸や背の中央部では脂腺も大きく数も多く、皮膚1cm2あたり800個ある。一方、腕や足では少なく平均50個である。そのため、顔面、胸や背の中央部のほうが、腕、足に比べて脂っぽい。皮脂の量は性別、年齢、季節、皮膚の湿潤度によっても異なる。口唇、陰部では脂腺は直接皮膚に開口する。

 

一般には脂腺は男性のほうが女性より大きく、したがって皮脂の量も多い。年齢からみると、新生児期、思春期に分泌が盛んになる。この理由として、男性ホルモンは脂腺を大きくし、皮脂の分泌を増やすことがあげられる。女性の場合は排卵後の一時期、黄体ホルモンの増加が脂腺を刺激し、皮脂の分泌が亢進するため、生理前にニキビが悪化する人もいる。

 

新生児では、胎盤経由の母親の男性ホルモンの影響により脂腺の働きが活発になり、皮脂の分泌量も一時的に増える。

 

中年以降になると、女性では閉経後皮脂量は減るが、男性では若い頃とあまり変わらない。

 

汗腺

エクリン汗腺

体全体にあり、その数は平均200万~600万個で、頭、額、手のひら、足の裏でよく発達している。体すべての汗腺が汗をつくると、1時間で1L以上、1日に10Lにもなる。

 

エクリン汗腺からの汗は、塩分、尿素、乳酸、アンモニアなどを主成分としており、ちょうど尿を薄めたものに近い。エクリン汗腺は年をとるにつれ腺そのものが小さくなり、汗の分泌量が減る。老人性乾皮症の原因の1つである。

 

エクリン汗腺からの発汗には3種類あり(表1)、体温調節、老廃物の排泄という点で皮膚の大切な機能の1つといえる。

 

表1 エクリン汗腺からの発汗

エクリン汗腺からの発汗

 

アポクリン汗腺

わき、へそ、陰部にあり、男性より女性に多く存在する。思春期になるとその機能が活発化し、汗の量が増える。

 

アポクリン汗腺から出る汗は無臭であるが、皮膚の常在細菌により分解され、特有の臭いに変化する。わきの下は細菌が増えやすく、臭いも強くなる。したがって、アポクリン汗腺からの多汗はわきが(腋臭症)の原因となる。

 

角化した皮膚組織の一部で、通常の皮膚と異なり、かたいケラチン線維を含んでいる。指先の保護、知覚に重要である。また、全身性疾患に伴い、さまざまな変化がみられる。

 

 

目次に戻る


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

 

[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

SNSシェア

看護知識トップへ