妊娠中期のスクリーニング

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より図転載。
今回は妊娠中期のスクリーニングについて解説します。

 

立岡和弘
静岡市立清水病院産婦人科長

 

 

妊娠中期のスクリーニング

妊娠中期以降に、超音波検査を用いて胎児の推定体重と羊水量(Amniotic fluid index:AFI)または羊水ポケットを測定し、胎児の評価を行う(図1)。

 

図1 AFIの測定

AFIの測定

AFIは4回測定後に計算される。図1は4回目の4.9cmを計測したところである。AFIの正常値は8〜20cmであり、25cm以上を羊水過多、5cm未満を羊水過小とする。

 

羊水ポケットとは、超音波断層法による半定量的な羊水量の測定指標である。

 

超音波断層法で、プローブを子宮壁に対して垂直にあて、その画面で子宮内壁と胎児部分の間で最も距離のあるところを測定する(図2)。その距離が2cm以下を羊水過少とし、8cm以上を羊水過多と診断する。

 

図2 超音波による羊水量の測定

超音波による羊水量の測定

妊娠子宮を図のように4分割して、各区域の最大深度の合計値(A+B+C+D)で表す。

 

目的

中期におけるスクリーニングでは、次の症状の早期発見を目的とする。

①子宮頚管長と早産
②前置胎盤
③循環状態の異常、血液凝固能の亢進
④貧血

 

子宮頚管長の確認

妊娠中期の妊婦健診時に、胎児形態異常の有無を評価する。近年、切迫早産のスクリーニングとして、経腟超音波を用いた子宮頚管長の確認が行われており、子宮頚管長は早産とよく相関する。

 

妊娠中期に35〜45mmある子宮頚管長は、妊娠末期になるにつれ、次第に短縮する(図3図4)。子宮頚管長が短いほど早産となる可能性が高い。妊娠中期に25mm以下の症例では早産のリスクが高いことに留意して、頚管縫縮術を考慮する。

 

図3 妊娠25週の子宮頚管長

妊娠25週の子宮頚管長

 

図4 妊娠37週の子宮頚管長

妊娠37週の子宮頚管長

 

前置胎盤の診断

前置胎盤とは、胎盤の一部、または大部分が子宮下部(子宮峡)に付着し、内子宮口に及ぶものをいう(図5)。

 

図5 前置胎盤の分類

前置胎盤の分類

 

前置胎盤の診断は経腟超音波検査で行う(図6)。

 

図6 前置胎盤(妊娠32週)

 前置胎盤(妊娠32週)

内子宮口に胎盤が付着している。内子宮口より胎盤辺縁が2cm以上あるので全前置胎盤と診断される。

 

歯科健診

妊娠16周~27週の安定期には科健診の受診が勧められている。歯周病や虫歯はサイトカインの分泌から切迫流早産の原因となることがあるため、歯科健診が推奨されている。

 

その他

妊娠中期は循環器系の負担が最も増えるため、この時期に心電図をとる。また、貧血が進む時期なので、血算も行う。

 

妊娠が母体の循環器系に与える影響としては、妊娠経過に伴う循環状態の変化と妊娠後期の血液凝固能の亢進がある。妊婦の循環血液量は、妊娠28週から34週で最も増加し、妊娠前の約1.5倍になる。この循環血液量の増加は、子宮胎盤循環を円滑にすると同時に、血栓や梗塞の防止、分娩時の出血への生理的な対応と考えられている。

 

 

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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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